近年、Webサイト運営関係者の間で「E-A-T」への関心が高まり、自社サイトをE-A-T重視のサイトへ改善する動きが強まっています。E-A-Tがなぜそんなに重要なのでしょうか。
E-A-Tとは
E-A-Tとは「Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)」の頭文字をとった名称で、「Google検索品質評価ガイドライン」で定めているWebサイトの品質評価基準の1つです。E-A-TはSEO対策の上でも重要な概念になっています。
E-A-Tの初出は2014年3月発行の同ガイドラインVer5.0とされています。
それによると、
- Expertise(専門性)はコンテンツ制作者に十分な専門知識があること
- Authoritativeness(権威性)はコンテンツ制作者やWebサイト運営者がその分野の権威であること
- Trustworthiness(信頼性)はコンテンツ制作者やWebサイト運営者が信頼できること
とされています。
つまりGoogleはガイドラインに「E-A-T条項」を盛り込むことにより、「この3要件を満たさないコンテンツやWebサイトは評価しない」と言っている訳です。
なおガイドラインは、GoogleのWebサイトの評価基準を定めた指針であると同時に、GoogleのSEOアルゴリズムを決めるデータの基礎にもなっています。
従来は非公開でしたが2015年11月に初公開され、以降、必要に応じて更新され、最新版は2020年10月更新となっています。
Googleがガイドラインに「E-A-T条項」を盛り込んだ理由
GoogleのSEOアルゴリズムの精度がまだ低かった2010年代前半、不正な手段でWebサイトを検索エンジンの上位に表示させる「ブラックハットSEO対策」が横行していました。低品質のコンテンツしかないWebサイトがSEOアルゴリズムに適応しそうなキーワードを片っ端から盛り込む、被リンクを購入して人気サイトに見せかるなどの詐欺的手法が、SEO対策としてある通用していました。
これに危機感を抱いたのがGoogleでした。同社は「ユーザニーズを満たす信頼性の高い情報を提供」する「ユーザファースト」を経営理念の1つに掲げています。
このため同社は、詐欺的なコンテンツや見せかけ的なコンテンツではなく、信憑性の高い良質なコンテンツが検索結果上位に表示されるよう、SEOアルゴリズムを進化させてきました。
この過程で同社がWebサイトの品質評価をする上で不可欠と判断したのが、ユーザファーストを具現化するための「E-A-T条項」でした。
この条項を2014年3月発行のガイドラインに盛り込んだ結果、2015年以降はブラックハットSEO対策は効果がなくなり、ユーザファーストを目指しているWebサイトのコンテンツがGoogle検索エンジンの検索結果上位に表示されるようになりました。
E-A-Tの3要件
E-A-Tの3要件とは、次の要件とされています。
■Expertise(専門性)
これはWebサイトやそのサイトで公開しているコンテンツが、「特定分野に特化しているか」と言う要件です。
百貨店のようにあらゆる分野のコンテンツを取り揃えている総合サイトより、ファッション、旅行、人事・労務など特定分野に特化しているサイトのコンテンツの方がユーザにとって有益という考え方です。
■Authoritativeness(権威性)
これは第三者から見て、「有益性のあるコンテンツをサイトが公開しているか」と言う要件です。
この要件においてはコンテンツだけではなく、当該コンテンツの発信者が「どのような組織に所属する誰なのか」も評価対象になります。
例えばある感染症の予防や治療に関して、医療とは無縁の人が自分の経験に基づいて発信した情報と、当該感染症の治療に当たっている医師が発信した情報とでは、その信憑性とユーザにとっての有益性の違いは明白です。
■Trustworthiness(信頼性)
これはコンテンツの中身が「ユーザにとって信頼できる情報か」と言う要件です。
この要件においては、コンテンツの中身だけではなく、サイト自体のセキュリティレベルも評価対象になります。
例えば株式上場で重い社会的責任を負っている企業、公益を保障する責任を負っている官公庁・公益法人などが運営しているサイトと、個人事業者が運営しているサイトとでは、社会的責任の度合がまったく異なります。
したがって運営者の詳細なプロフィールを明示して責任の所在を明確化し、https設定で安全に閲覧できる環境を整えているサイトが「信頼性がある」と言えるでしょう。
E-A-TとYMYLの関係
YMYLとは、Your Money Your Lifeの略語で「ユーザの財産と生活・健康に関わる分野」のコンテンツを指します。
具体的には次の分野のコンテンツです。
- 商品の売買・金銭取引分野……通販サイトや金融機関が取り扱っている商品のオンライン購入・決済に関する情報
- 財産分野……投資、節税、退職金運用、住宅購入資金、教育・結婚資金、生命保険などに関する情報
- 健康分野……健康、医薬品、病気予防、栄養などに関する情報
- 法律分野……離婚、養育権、遺言書作成、国の税制・助成策などに関する情報
- ニュース・生活分野……災害情報、社会福祉、求人、法的手続きなどに関する情報
これらの分野のコンテンツは、情報の E-A-Tが担保されていないと、それを閲覧したユーザのキャリア・人生に深刻な打撃を与える可能性があるからです。
このためGoogleはYMYLのE-A-Tをことさら重視していると言われます。
E-A-Tを高める方法
E-A-Tはそれぞれが独立した要件ではなく、極めて関係性の強い要件がセットで設定されていると言われます。
なぜなら、E-A-Tの中でまず専門性の高いコンテンツ制作に集中的に取り組み、そのコンテンツを数多く公開すれば、Googleのサイト評価が上がってコンテンツの検索結果が上位に表示され、ユーザの認知度が高まり、必然的にサイトの権威性と信頼性も高まると予測されるからです。
サイトの専門性を高めるためには、次の対策に取り組む必要があるでしょう。
サイトを特化型にする
例えば生活情報全般を公開しているサイトの場合は、生活情報としてのマンションの購入、相場、物件選びなどのコンテンツに絞ったマンション分野に特化したサイトに衣替えすることです。
そのためには、
- マンション分野における専門知識
- その知識を生かした関連コンテンツの充実と内部リンクの設定
- コンテンツ同士の関連性確保
- コンテンツ同士の関連性が容易に分かるインデックスの作成
- マンション分野の情報の網羅性とエビデンスの担保
などが必要になります。
なお社内に「特定分野における専門知識」を持ったパーソンがいない場合は、外部の専門家にコンテンツの原稿執筆を依頼する、コンテンツ原稿の監修を依頼するなどで、コンテンツの専門性と信憑性が確保できます。
例えば水産加工メーカーが、魚の栄養素に関しては管理栄養士に署名入りで執筆・監修をしてもらう。あるいは魚のおいしい食べ方に関しては調理師専門学校教員や老舗日本料理店の板長に署名入りで執筆・監修してもらうなどの方法です。
サイテーションを獲得する
サイテーションとは、自社と取引関係のない第三者サイトのコンテンツに、自社コンテンツの一部が引用されたり、自社サイトやコンテンツが紹介されたりすることです。サイテーションされると言うことは、そのコンテンツの専門性が高い証と言えます。
サイテーションされるコンテンツ数が増えれば増えるほど、そのサイトの権威性と信頼性も高まるでしょう。
コンテンツの外部資料引用は一次情報に限る
コンテンツの専門性とエビデンスを担保するため、外部資料を引用する必要がしばしば生じます。この場合は国や自治体が発表している統計・政策資料、シンクタンク・市場調査会社が発表している資料など、出所が明確でオーソライズされた一次資料を使う必要があります。
オーソライズされていない資料はエビデンスにならない上、主観的なものもあるのでユーザに誤った情報を提供し、サイトの専門性が一挙に損なわれるリスクがあります。
コンテンツの公開日・更新日を明記する
専門性が高いコンテンツ要件の1つが「情報の鮮度」です。公開日や更新日が古いだけでユーザは閲覧の価値がないと判断して直帰する、検索結果の上位に表示されないなどの可能性が高まります。
特にYMYLのコンテンツについては情報の専門性と鮮度を重視するので、公開日・更新日明記は必須要件化していると言われます。
まとめ
E-A-Tが重視されている近年、E-A-T3要件を満たしたサイト作りに取り組むのは当然ですが、それ以上に重要なのが「有益な情報を提供している」とユーザに評価されるサイト作りと言えます。つまり、ユーザファーストの情報提供に地道に取り組んでいるサイトが、結果的にE-A-Tが高く、SEO対策効果が高いサイトになる近道と言えるでしょう。