知らないと競合に差を付けられるリードナーチャリングとその成功事例

「知らないと競合に差を付けられるリードナーチャリングとその成功事例」のアイキャッチ画像

インバウンドセールスの主要販促手法と言われている「リードナーチャリング」は、見込み客の購買行動促進に効果的との評価が高まり、導入企業が増加中と言われています。ここでは競合他社に差を付けられないように、販促関係者が知っておきたいリードナーチャリングの概要と導入企業の成功事例を紹介します。

toBやtoC高額商品の販促に有効なリードナーチャリングとは

リードナーチャリング(見込み客の育成)とは、SNSへのコンテンツ投稿、メルマガ配信、Webセミナー開催などで発掘した見込み客のフォローで自社との関係性を強めながら、見込み客の自社商品購買意欲を高めてゆく販促手法のことです。

特にtoBビジネス、マンション等購買決定に時間がかかる高額商品などの販促に有効な手法と言われています。

リードナーチャリングは基本的に次の手順で実施します。

1.見込み客情報の集約……展示会、セミナー、営業訪問などで営業社員が個別に収集した見込み客情報を集約

2.見込み客の分類とステータス付け……集約した見込み客を性別・年齢・職業、・自社商品購買履歴等の属性、資料請求・見積依頼等のコンバージョン履歴などで分類。見込み客度の高い順にステータスを付ける

3.見込み客の育成……見込み客個別のステータスに合致したコンテンツ発信とその反応の分析により、その見込み客との関係性を強め見込み客が購買行動を起こすきっかけを作る

リードナーチャリング導入企業が増加している理由

リードナーチャリングを導入する企業が増加している理由として、次が挙げられます。

(1)インターネットを背景にした購買意思の受動的決定から能動的決定への変化

インターネット普及以前のtoBビジネスにおいては、営業社員が提供する商品情報、展示会・セミナーで提供される商品情報などの収集により、ユーザは購買の意思決定をしていました。

しかしインターネットが普及した近年、ユーザは自らインターネットで商品情報を収集し、購買候補商品の性能・コストパフォーマンス比較などで購買の意思決定をするようになっています。

(2)購買プロセスの長期化・複雑化

toBビジネスの場合、購買意思決定に複数の関係者が関わるので、購買検討期間が長いのが特徴です。さらにインターネットの普及により購買候補商品のインターネット検索と性能・コストパフォーマンス比較などの購買行動が加わったため、購買プロセスが長期化・複雑化しています。

(3)固定客の休眠化

固定客でもアフターフォローが疎かになったり途絶えると、途端に休眠化します。インターネット普及以前のtoBビジネスにおいてはアフターフォローに時間と経費がかかるため、「進行中の案件が多い」、「新規見込み客開拓に忙しい」などの状況が続くと固定客の「お守り」ができなくなり、休眠顧客を増やす結果になっていました。

リードナーチャリングはこれらの変化や状況に対して適切な対応ができると言われています。さらに次の効果も高いと言われています。

(1)営業活動の効率化

従来のtoB営業では購買窓口担当者、購買検討者、購買決裁権者と成約まで何重もの関門があったので、決裁権者まで辿り着くまでの間に商談立ち消え、商談破談などのケースが珍しくありませんでした。

しかし見込み客をステータス付けするリードナーチャリングは、見込み客絞込みの精度が高いので、成約確率の高い見込み客を営業送客できます。さらに営業アプローチ以前からの見込み客との良好な関係性を保持することで見込み客の購買特性や業務上の課題も把握可能なので、営業社員は購買検討者や購買決裁権者に対し説得力のあるプレゼンもできます。このため効率の高い営業活動が可能です。

(2)新規顧客開拓の時間・労力・コスト縮減

新規顧客開拓は自社事業の拡大に欠かせません。しかしこれには多大な時間と労力とコストを要します。特に自社と接点のない非認知ユーザ層を見込み客化するコストは、固定ユーザ層をフォローするコストの約5倍と言われています。

しかし非認知客を発掘して接点を見つけ、見込み客を育成してゆくナーチャリングなら、少ない労力とコストで新規顧客開拓が可能です。

なお、リードナーチャリングはメルマガ配信、SNS投稿、オウンドメディアでのコンテンツ公開、Webセミナー開催などの手段で、見込み客の発掘と育成をするのが普通です。

リードナーチャリングの成功事例

リードナーチャリング導入企業の増加により、その成功事例発表も増えています。ここではその中で代表的な3事例を紹介します。

(1)ITソリューション会社A社:購買決定のプレゼン依頼を30件以上獲得

A社は既存顧客の評価が高い製造業向けの在庫管理ソリューションツールを拡販するためリードナーチャリングを導入。次の手順でリードナーチャリングを実施しました。

<1>自社のビジネス情報提供サイトに会員登録している会員数十万人の中から、製造業関連企業の会員数万人を抽出

 <2>抽出した会員に自社ツールの特徴を踏まえた「在庫管理ソリューション情報」をメルマガ配信。見込み客との接点を獲得

 <3>当該情報に興味を持ち、もっと詳しい情報を得ようとメルマガのリンクをクリックし、当該情報の特設サイトにアクセスした会員のサイト内行動履歴と、自社が蓄積しているその会員の過去の接点履歴を紐付け、その分析により「見込み客度ランク」を設定

 <4>その結果を営業送客。営業部門がランクの高い見込み客順にアプローチ

この販促活動により同社は、

  • 購買決定に向けたプレゼン依頼を30件以上獲得
  • 従来のWebマーケティングに比べ案件化数が2倍増

などの成果を上げたと言われています。

(2)Webマーケティング支援サービス会社B社:名刺の活用で成約率が向上

B社は展示会、セミナー、日常の営業活動などで入手しながら死蔵状態になっている名刺を販促活動に活用しようと、リードナーチャリングを導入。次の手順でリードナーチャリングを実施しました。

 <1>営業社員が個別に管理していた数十万枚の名刺情報を収集し、データベース化

 <2>名刺入手時期が「新しい・古い」を基準に潜在見込み客を抽出、潜在見込み客に対しマーケティングのトレンド、Webマーケティングのメリット・効果などを伝える情報をメルマガ配信

 <3>メルマガを読み、資料請求のリンククリックをした見込み客に自社サービスの特徴、実績、既存顧客の評価などをアピールする資料をメール送信。その後も自社事業の近況、自社サービスの活用事例と効果などを伝えるメール送信で自社との関係性を構築

 <4>そうして顕在化した見込み客を営業送客し、営業部門がアプローチ

この販促活動により同社は、

  • アポイント成功率が10―15%に向上
  • アポイントからの成約率が20%に急上昇

などの成果を上げたと言われています。

(3)イベント企画会社C社:潜在見込み客をリードナーチャリングで新規開拓

C社は会社創立パーティ、社内運動会などのイベント企画を中心にtoBのイベント企画事業を展開しています。

企業にとって会社創立パーティ、社内運動会などのイベントは経費がかかるため、複数の会社から相見積を取る、社内で実行委員会を組織するなど準備期間が長期化します。その上、社員は本来業務ではないので専門知識やノウハウに乏しく、自社と取引実績のある会社にイベントの企画と実行を依頼するのが大半です。

このためイベントの新規顧客開拓は極めて難しいと言われています。この難問解決を目的にC社はリードナーチャリングを導入。次の手順でリードナーチャリングを実施しました。

 <1>オウンドメディアを開設し、イベントの企画・実行手順、ノウハウ、演出のアイデアなどの情報を満載したコンテンツを公開

<2>コンテンツを読んだ潜在見込み客をコンテンツ内の導線により資料請求バーに誘導し、コンバージョンを獲得

<3>その結果を営業送客し、営業アプローチで潜在顧客を顕在顧客化

この販促活動により同社は、これまで自社との接点を見つけるのに多大な時間・労力・経費を要し、しかも「千三つ」の成果しか上がらなかった新規顧客開拓が容易になり、その開拓率も上昇したと言われています。

まとめ

リードナーチャリングは、売上に直結する活動ではないので「金食い虫」と誤解されやすい泣き所を持っています。しかし市場の構造的な購買行動の変化に対応するため、販促部門は経営ボードや営業部門に対して、営業送客による客観的な売上増加予測を説明して誤解を解くなどの適切な対応をしながら、導入を進めてゆく必要があるようです。