コンテンツマーケティングに取り組んでいる企業の間で「SNS人気」が高まっています。これまでSNSは「若者向けのメディア」との認識が強かったためか、コンテンツ発信形態としてSNSを活用する企業は少なかったと言われています。では近年、なぜSNSを活用する企業が増えてきたのでしょうか。
コンテンツマーケティングでSNSが欠かせない理由
コンテンツマーケティングでSNSを活用する企業が増えてきたのは、SNSの利用率の高さが大きな理由と言えます。
例えば総務省の『令和2年 情報通信白書』によると、2019年現在の「個人のインターネット利用率」は89.8%に上り、このうちスマートフォンでの利用が63.3%に上っています。
これは端末別利用率ではトップで、2位のパソコンː50.4%を12.9ポイントも上回っています。またスマートフォン利用者の100%近くがSNS利用者でもあると見られています。
SNSの利用者がこれだけ多いと、コンテンツマーケティングに取り組んでいる企業はもう「SNSは若者向けのメディアだから」と、活用に消極的ではいられないでしょう。
さらに「SNSは若者向け」との認識もどうやら時代遅れになってきたようです。
先の情報通信白書の「年齢階層別ソーシャルネットワーキングサービスの利用状況」を見ると、13―19歳層から50―59歳層までのSNS利用率が70%を超え、SNS利用者のボリュームゾーンを形成しています。いわゆる「現役世代」の大半がこのゾーンに属しています。
その意味で、特にtoCビジネスを展開している企業の場合、SNSを積極的に活用しなければ自社が発信したコンテンツを読んでくれるのは、ターゲットのごく一部になってしまう可能性があります。
SNSの特徴は情報発信のしやすさ、情報収集のしやすさ、情報共有のしやすさ、ネットコミュニケーションのしやすさなどにあり、この特徴から強い情報拡散力があると言われています。したがってコンテンツマーケティングの主要ターゲットである非認知ユーザ層(自社商品をまったく知らないユーザ)と潜在ユーザ層(自社商品を知っているが購買意欲はないユーザ)との接点を持ち、広げるためにもSNS活用は極めて重要と言えそうです。
なお、SNS活用により認知度向上、ブランド浸透、ロイヤリティ・企業業価値向上などのマーケティング効果が期待できると言われています。
コンテンツマーケティング展開におけるSNSの活用手順
コンテンツマーケティングでSNSを活用する場合は、一般に次の手順で行います。
(1)SNS活用目的の明確化
SNSの活用に際しては自社名や自社商品の認知度向上、ブランド浸透、自社への好感度向上など、SNSを活用する目的をまず明確化する必要があります。これが不明確だと以降の手順がすべて曖昧になり、SNS活用が失敗に帰する可能性があります。
(2)目標設定
自社サイトへのアクセス数、自社サイトの会員登録数、フォロワー数などの目標を設定します。同時に「無理なくSNS活用を継続できる」を目安に投稿頻度を決定します。
(3)プラットフォームの選定とSNS向けコンテンツ制作
自社商品のマーケティングに適したSNSのプラットフォーム選び、SNS向けのコンテンツを制作します。
SNSはプラットフォームごとに特徴が異なります。例えば、フェースブックの場合はビジネス文書のような丁寧な文章、ツイッターの場合は友人と話をしているようなフレンドリーな文章、画像中心のインスタグラムの場合は短文、ラインの場合は絵文字を多用した視覚的な文章が好まれるなどです。この他、プラットフォームのユーザ数、年代・男女別ユーザ構成などの特徴を踏まえ、選んだプラットフォームと親和性があるコンテンツを制作する必要があります。
(4)SNSへコンテンツを投稿
アカウントを取得し、制作したコンテンツをSNSに投稿します。SNSでは喜び、驚き、感動などへの「共感」がSNS内で「共有」され、「拡散」されやすいので、共感を得やすい文章のコンテンツ投稿が重要です
(5)投稿結果の集計・分析
投稿結果の集計と分析を一定期間ごとに行い、コンテンツの改善点を探します。そして「投稿→集計・分析→改善」のサイクルを回します。
なお投稿結果の集計・分析においては、
- 投稿を呼んだユーザ数
- 投稿のフォロワー数
- 投稿の反応数(いいね・リツイート・コメント・シェア数)
- ハッシュタグ数
- 自社サイトへのアクセス数
などの数値が分析指標として一般に用いられます。
SNSを効果的に活用するための機能
SNSには他のコンテンツ発信媒体にはない次のサービス機能があります。これらをうまく利用すれば、より効果的なコンテンツマーケティングが展開できそうです。
(1)SNS広告投稿機能
各ベンダのSNSプラットフォームは、それぞれ「SNS広告」投稿機能を搭載しています。
SNSプラットフォームにおいては、SNS広告は投稿として扱われます。他のコンテンツ発信媒体と異なり、広告を違和感のない形で露出できます。
またターゲットユーザの属性、趣味、ライフスタイルなどの要素で自社が設定したペルソナへ、ピンポイントで広告コンテンツを発信できるのもSNS広告の特徴です。
(2)SNSキャンペーン機能
ユーザ参加型の宣伝活動であるキャンペーンもSNS上で開催できます。
SNSキャンペーンは、実店舗等で開催するリアルなキャンペーンと異なり時間・場所を問わないので、ユーザは自分の都合に合った時間帯に参加できる気軽さが特徴です。
さらに企業が企画した面白い、斬新だ、話のネタになるなどユーザの共感を呼ぶキャンペーンは即座に他のユーザと共有・拡散されるのも、SNSキャンペーンの特徴といえます。
このため、
- 自社アカウントの新規フォロワー獲得
- 自社ブランド浸透
- クーポン発行による自社実店舗への来店促進、実イベントへの参加促進
など様々な目的のマーケティング活動に効果があることから、近年はSNSキャンペーンが盛んに開催されています。
(3)インフルエンサー機能
インフルエンサーとは、他のSNSユーザの購買行動に大きな影響力を持つキーパーソンのこと。「SNSユーザの代表」的な機能を有しており、各人に1万人以上(著名人の場合は10万人以上)のフォロワーがいます。
またインフルエンサーは一般ユーザと異なり化粧品、ファッション、健康食品など様々な分野で豊富な専門知識を持っているのが特徴です。
そこでSNS上ではインフルエンサーを起用し、
- 新商品を試してもらい、その評価を投稿してもらう
- 実店舗や実イベントに招待し、その評価を投稿してもらう
- ツアーに招待し、その体験を投稿してもらう
など様々な企画が盛んに行われています。訴求力の高い販促活動が可能なので、今では新しい販促活動として定着しつつあるようです。
(4)ライブコマース機能
ライブコマースとは、ECサイトとライブ配信を組み合わせた販売形態のこと。具体的には商品の特徴、使い方、商品を使用したユーザの評価などを盛り込んだ動画を自社ECサイトからリアルタイムでSNSに投稿し、それに興味を持ったユーザに購買を促す仕組みです。
ライブコマースの商品に興味を持ったユーザは、その場で即座にライブ開催者へ質問できるので、実店舗と同じように商品に対する疑問や不安を解消しながらショッピングできるのが特徴です。
企業側にとっては自社商品に対する疑問や不安のリアルな声を直接収集でき、既存商品の改善や新商品の開発に活用できるメリットもあります。
ライブコマース先進国と言われる中国では、2020年の市場規模が14.2兆円と予測され、すでに独立ジャンルの巨大市場を形成していると見られています。
日本ではまだ認知度が低い販売形態ですが、
- 5Gの普及と共に高画質・高速のライブ動画配信ができる環境整備が進む
- ノウハウ蓄積によりライブ動画配信の品質やライブ動画コミュニケーションの仕組みが洗練される
などの予測から、営業関係者の間では日本のライブコマース市場成長への期待が高まっているようです。
まとめ
コンテンツマーケティングにおけるSNS活用は、今では「SNSマーケティング」と呼ばれるほどコンテンツマーケティング領域での重みが増しています。とは言え、コンテンツマーケティングに取り組んでいるすべての企業にマーケティング効果がある訳ではなく、一般に「SNS利用者のボリュームゾーン向けの商品をラインナップしている企業」、「SNSユーザが情報共有・拡散したくなる商品をラインナップしている企業」、「オンライン販売の商品をラインナップしている企業」などがSNSを活用すれば、マーケティング効果が高いと言われています。 一見制約がありそうです。ところが実は、これら特性の1つや2つはコンテンツマーケティングに取り組んでいる大半の企業に共通する特性と思われます。したがってSNS活用が遅れると、コンテンツマーケティングにおいてノウハウ蓄積面等で先行企業に水を開けられる可能性があるかも知れません。