飲食店は開業後3年以内に70%の店が経営不振になり、10年後には10%の店しか生き残れないと言われています。その理由は店舗賃貸料、人件費、食材費、光熱・水道費、消耗品費などの固定費割合が高く、利益率が低い事業モデルにあります。また商圏内の競争が激しいのも飲食業界の特徴と言えます。ここではその業界で価格競争に巻き込まれないための新規ユーザ集客と固定客化のポイントを解説します。
飲食店の集客プロセスと固定客化のポイント
飲食店の消費者行動は、一般に「AIDAの法則」で表されます。AIDAとは、
- Attention(認知)……飲食店の情報を知る
- Interest(興味)……その店に興味を持つ
- Desire(欲求)……その店で飲食したくなる
- Action(行動)……その店で飲食する
の4段階の行動モデルであり、消費者行動の中では最もシンプルなモデルです。
このシンプルな行動をする消費者でも、飲食店が集客し、新規顧客を固定客化するためには、次の仕掛けが必要になります。
(1)コンセプト
飲食店におけるコンセプトは、その店の存在価値を意味します。
例えば地域住民の交流の場、帰宅途中のビジネスパーソンがその日の疲れをいやす場、○○の会食の場などのコンセプトを打ち出すことで、集客の方向性が明確になります。
(2)看板メニュー
看板メニューはその店の代名詞であり、招き猫です。また看板メニューは新規顧客が一番注文する可能性が高く、その客が固定客化するきっかけになります。
注文の際に看板メニューを薦めることにより多くの新規顧客が「○○は美味しかった」の満足感を体験し、固定客拡大の基になります。
(3)四段階価格
「松竹梅」の三段階価格は多くの飲食店でセオリーになっています。これは「消費者は心理的に最安値と最高値を選択しない」とする心理学の「極端回避性」理論に基づくものです。飲食店経営においては、同理論の応用で顧客を中間価格に誘導し、売上の安定を図ろうとしています。
ところが団体客の場合は、予算の制限があることから同理論は当て嵌まらず、最安値の大量注文で平均客単価低下というケースが珍しくありません。
そこで特上価格を設定し、価格の選択肢を四段階にすると、予算に余裕のある団体客や個人客は中間価格帯を選択する確率が高まり、平均客単価底上げが可能になります。
(4)ランチメニュー
ランチに格安メニューを導入すると客層を広げることができます。しかし格安メニューを導入すると、その価格がその店の基準になってしまい、売上低下要因になります。経営が安定している飲食店は、料理の満足度が高いメニューとそれに見合った価格設定により、おいしい料理を食べたい客を選んでいます。またおいしいランチメニューは、ディナーメニューへの期待感を膨らませます。
したがって食通を唸らせるディナーメニューを連想させる名物ランチや豪華な日替わりランチを提供する方が、食通をディナーメニューの固定客にできる可能性が高く、経営の安定化にも繋がります。
費用対効果が高い飲食店のWeb集客の方法
飲食店の新規顧客集客には新聞折込みチラシ、ポスティング、フリーペーパー広告、法人へのチラシ配布など様々な方法があります。しかし費用対効果の高い集客法は、次の「Web集客」といわれています。
店のコンセプト、産地直送食材使用等自店料理の特徴、店の雰囲気、全メニュー・名物メニュー・日替わりランチメニューの料理写真入り紹介などで自店の魅力を、長期継続的に常時アピールできるWebサイトは最も費用対効果の高い集客法と言えます。
飲食店の集客に適したWeb広告として次が挙げられます。
(1)リスティング広告
リスティング広告とは、Googleキーワード検索と連動して検索結果画面の上部に表示される広告のことです。
不特定多数を対象にした新聞折込みチラシ、ポスティング、フリーペーパー広告などと異なり、そのことに興味を持ってキーワード検索したユーザに広告を配信する仕組みなので、ユーザの注目率が高い広告と言えます。
リスティング広告のメリットとして、
- 自店に興味を持ちそうなユーザに見てもらえる
- 広告料は広告のクリック回数×クリック単価で決まるので、比較的低予算で広告可能
- 広告配信・中止が何時でもできる
などが挙げられます。
(2)SNS広告
SNS広告とは、Twitter、Facebook、Instagram、などSNSのタイムライン画面に表示されるWeb広告のことです。
SNSを利用しているユーザのプロフィール情報に基づいて広告表示をできるので、ターゲティング広告が可能なWeb集客法と言えます。
SNS広告のメリットとして、
- 自店を知らない客を含めた幅広い見込み客にリーチできる
- タイムラインに溶け込むので広告臭がなく、ユーザに受け入れられやすい
- 拡散されることにより集客拡大の可能性がある
などが挙げられます。
(3)ジオターゲティング広告
ジオターゲティング広告とは、ユーザの位置情報に基づいて表示されるWeb広告のことです。
ターゲットユーザの移動に合わせた特定のエリア内での広告配信ができることに加え、ユーザの行動履歴も広告配信に反映されるのが特徴です。さらに自店の広告を見たユーザがどれだけ来店したかのコンバージョン計測も可能です。
ジオターゲティング広告のメリットとして、
- 店の近辺にいるユーザに広告配信ができるのでWeb集客の確率が高い
- ユーザの行動履歴解析により潜在顧客を顕在化することができる
などが挙げられます。
ジオターゲティング広告は地域密着型のWeb広告として人気が高まっています。
グルメ情報ポータルサイト
グルメ情報ポータルサイトの特徴として、ユーザが地域・メニュー・シーン別に店を検索・予約までできることが挙げられます。
飲食店探しのこの利便性があるためか、公正取引委員会が2020年3月に発表した『飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書』によると、
- 飲食店の約63%が飲食店ポータルサイトに自店情報を登録
- 消費者の約54%が飲食店を探す時に飲食店ポータルサイトを利用
となっています。
またグルメ情報ポータルサイト登録のメリットとして、
- 年齢層、予約時期などサイト閲覧ユーザのデータを取得できる
- Web予約機能で手間暇がかかる電話予約対応時間を削減できる
などが挙げられます。
Googleマイビジネスとは、ローカルビジネス(地域密着型営業の飲食店を始めとする実店舗)の無料集客ツールです。
Googleマイビジネスに登録すると、Google検索結果画面の上部やGoogleマップの上にローカルビジネス情報が表示されます。したがって飲食店の場合は、Googleマイビジネスに自店情報を登録すると、自店商圏のターゲットユーザに認知されやすくなるので、自店Webサイトのアクセス数増加の可能性があります。
またGoogleマイビジネスの「投稿機能」を活用すれば、
- 自店名、ラーメン店・ファストフード・カフェ等の飲食業態、住所、営業時間などの自店の基本情報公開
- イベントやキャンペーンの告知
- 新メニューの期間限定割引告知
- 自店メニューの特徴や魅力のアピール
などによる無料集客活動が可能になります。
現在はスマホで現在地近くの飲食店を探すユーザが多いので、Googleマイビジネスに自店情報を登録すれば、自店商圏内にいるユーザを自店へ誘導しやすくなります。
またGoogleマイビジネス登録のメリットとして、
- 登録手続きが簡単(Googleマイビジネスのアカウントを取得した後、Googleマイビジネス登録画面からガイダンスに従って必要事項を入力するだけ)
- レポート画面で集客の分析ができる
- 口コミ機能によるユーザとの関係性緊密化で固定客化が可能
などが挙げられます。
まとめ
飲食店がWeb集客に成功するためには、まずユーザに「あの店の料理を食べたい」と思ってもらえる必要があります。そのためには自店を知ってもらい、自店のWebサイトにアクセスしてコンテンツを読んでもらい、興味を持ってもらい、「あの店の料理を食べたい」ところまでユーザを導く魅力的で有益な情報提供が欠かせません。その誘導役になるのが自店のコンセプト、看板メニュー、ランチメニューなどになります。
そして来店客には気持ちよく食事をしてもらい、「初めての飲食」の満足感を持ってもらうことが固定客化に繋がります。メニュー完成度と接客品質の高さ、すなわち飲食店経営の基本である「おもてなし度」の高さ=Web集客の基本と言えるでしょう。