営業パーソンが今さら聞けないSFA/CRMの違い、使い方

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「SFA」と「CRM」の導入企業が拡大しています。ところが同じような用途で使われることが多く、しかも両者を混同しているユーザも少なくないと言われます。ここでは両者の特性を正しく理解し、両社のパフォーマンを十二分に活かす使い方を解説します。

1 SFAとCRMの導入目的は同じだが活用法がまったく異なるツール

「SFA( Sales Force Automationː営業支援システム)」と「CRM(Customer Relationship Management)ː顧客関係管理」は、顧客情報管理を目的にしたツールと言う点で共通しています。

SFAが顧客情報を管理する目的は、案件情報、商談進捗状況など見込み客や顧客に対する営業の経緯を記録することにより部門全体で営業ノウハウを蓄積・共有し、組織的なチームワーク営業を行い、営業活動の効率化を図ることにあります。

そもそもSFA開発の目的は「属人化していた営業活動の解消」だったと言われています。

と言うのはSFAを開発した米国では、かつて「セールスマン」が極めて流動的で、ある会社勤務中に収集した顧客情報を始めとする営業情報や、その間に蓄積した営業ノウハウは「自分もの」との認識が強く、営業活動が属人化していました。またその「セールスマン」が属人化した情報やノウハウを持ってライバル会社へ転職するケースも通例でした。

この防止策として米国でSFAが開発され、すべての「セールスマン」が同じツールで営業情報を蓄積し、それを会社の営業資産として会社が管理するようになった経緯があります。

一方、CRMが顧客情報を管理する目的は、データベースにすべての顧客情報を蓄積することにより、営業部門だけでなく商品開発部門、製造部門、販促部門など営業関連部門が顧客情報を共有することにより、それぞれの部門が適切な事業計画を立てることにあります。

このようにSFAとCRMは、顧客情報管理を目的にしたツールと言う点で共通していますが、その活用法がまったく異なります。

2 SFAとCRMの機能はここが違う

SFAとCRMの機能は製品ごとに異なりますが、各製品に共通する標準的な「顧客情報」と「情報管理機能」として次が挙げられます。

(1)顧客情報の違い

<SFAの顧客情報>

  • 企業名・所在地
  • 営業先担当者氏名・所属部署・役職・連絡先
  • 営業履歴
  • 商談案件
  • 案件内容
  • 顧客が抱えている課題
  • 顧客の興味・関心
  • 営業担当者のコメント

<CRMの顧客情報>

  • 企業名・所在地
  • 営業先担当者氏名・所属部署・役職・連絡先

(2)情報管理機能の違い

<SFAの情報管理機能>

 1.営業案件管理機能……営業先企業、営業先担当者氏名・所属部署・役職、提案商品とその営業進捗状況、受注確率・ランク、受注予定日、受注見込額など

 2.商談管理機能……過去の商談履歴とその目的、商談時間、商談の担当者と商談決裁権者、提案書と提案金額、商談進捗状況・成約確率、次回営業予定など

 3.営業プロセス管理機能……営業社員ごとの営業アポイント数、営業訪問数、提案商材の品目と数、受注率など

4.売上予測・予実管理……営業社員別・顧客別・商品別などの売上予測・予実管理

 5.スケジュール管理機能……営業社員ごとのスケジュール管理

 6.タスク管理機能……営業社員ごとのタスク管理

 7.営業日報作成テンプレート

 8.見積書・稟議書作成と承認申請のテンプレート

 9.データ集計・分析レポート自動作成機能……営業社員別、商材別、営業案件別、受注見込み別などのデータ分析・集計レポート

<CRMの情報管理機能>

 1.商談管理機能……商談進捗状況・成約確率、競合状況など

 2.営業活動管理機能……営業訪問の目的と結果、資料・情報提供の内容と客先の反応など

 3.メルマガ配信機能

 4.アンケート調査票テンプレート

 5.問合せ内容の記録・管理機能

3 SFAとCRM、それぞれの特徴

先に述べたように、SFAとCRMは顧客情報管理を目的にしたツールと言う点で共通していますがその活用法が異なります。では活用を前述の機能面で見た場合、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。

個人プレーからチームプレーへの転換を容易にするSFA

SFAは営業業務の中で、特に商談管理に導入効果を発揮します。商談進捗状況、受注額の幅、成約確率など、商談に関するあらゆるデータを営業社員個別の商談ごとに管理できるからです。

このため営業社員の場合は、どのような行動計画を立てれば自分が担当している商談を進捗させ、成約できるかの道筋が明確になります。一方、マネージャの場合は、停滞ぎみの商談を抱えている営業社員に商談進捗の適切なフォローができます。

また社員別・商談別のデータをデータベースで一元管理できるので、マネージャは自部門全体の売上予測も高い精度で立てやすくなります。さらにデータベースに蓄積した情報は部員全員が共有できるので、営業活動における認識統一ができ、担当者配置の全体最適化を図るための営業担当替えと業務引き継ぎもスムーズになります。

このような特徴により、従来は属人性から脱し切れなかった営業業務の組織化・効率化が可能となり、成果を上げやすくなります。

このようにして、個人プレーを避けられなかった営業業務をチームプレーへ変換しやすくできるのもSFAの特徴と言えるでしょう。

なおSFA導入のメリットとして、

  • 営業部門のチームワーク活性化
  • 書類・資料作成の省力化による営業の本来業務集中
  • 営業活動の効率化と生産性向上

などが挙げられます。

LTV向上を可能にするCRM

CRMは、自社と顧客との関係性を軸とした情報管理に導入効果を発揮します。自社と顧客との関係性を強め、顧客のロイヤルティを高めるリードナーチャリングにも有効です。

例えば顧客Aがどのような接点で自社を知り、どのような経緯を経て見込み客になり、どのような商談を経て既存客になったのかなどを、営業アプローチの履歴や購買履歴で追跡し、顧客特性も分析できるからです。

それにより顧客自身が気づいていないニーズまで汲み上げることができ、結果的に顧客満足度を高めて固定客化し、クロスセルやアップセルによりLTV(顧客生涯価値)の向上も可能にするでしょう。

なおCRM導入のメリットとして、

  • 顧客の可視化
  • 顧客への迅速かつ適切なアプローチとフォロー
  • 顧客のロイヤルティ向上

などが挙げられます。

4 SFAとCRMの活用法はここが違う

ここでは読者にSFAとCRMの使い方を分かりやすく知ってもらうため、ある日用品メーカーをモデルケースにその使い方を見てゆきます。

同社の製品はラインナップが22品目約3500点に上る多品種少量生産です。しかもジャンル別に営業部門の担当部署が分かれており、受注情報が営業部門から製造管理部門へ回付されてくるタイミングが部署ごとにまちまちなため、精度の高い製造計画を立てにくく、製造ラインの適切なコントロールも困難でした。

こうした事情から、同社では在庫の過不足がしょっちゅう発生し、在庫コストの高止まりと販売機会逸失に悩んでいました。

この問題解決を目的に同社はSFAとCRMをセットで導入。つぎのような効果がありました。

(1) 営業部門と生産管理部門のSFA情報共有で在庫の過不足が消滅

同社ではSFAを導入したことにより、営業部門が保管している商談進捗状況、売上予測、予実管理などの情報を製造管理部門も共有できるようになったため、製造管理部門は適切な製造計画と製造ラインコントロールが可能になりました。このため在庫の過不足が消滅し、在庫コストの圧縮や販売機会逸失も解消できました。また顧客に対してはオンデマンド状態で製品供給ができるようになり、顧客満足度も高まったようです。

(2)CRM導入で会社全体の売上が上昇

同社の営業は、ホームセンター、総合スーパーストアなどへのルートセールスが中心です。

CRM導入前は自社と顧客の詳しい関係性を把握できなかったので、営業社員はルートセールスで自分の担当製品のみを販売していました。しかしCRM導入後はそれを把握できるようになったので、ルートセールス時に自分の担当以外の製品もクロスセルできるようになり、効率的な営業活動ができるようになりました。

その結果、会社全体の売上も上昇したようです。

まとめ

営業は成約率より失注率が高い業務です。しかしSFA/CRMを導入すれば失注率を下げる可能性が高まるでしょう。また失注した商談も、SFA/CRMのデータ分析により失注の原因究明と営業アプローチの改善が可能になるので、次の商談成約に活かすこともできるでしょう。

なおSFA/CRMを導入する場合は、SFAかCRMかの二者択一ではなくセットで導入する方が、営業生産性が上がるようです。

顧客情報管理を目的にしたツールと言う点で共通しているので、それぞれの機能を営業活動のシーンやフェーズに合わせて連携運用しやすく、相乗効果も高いからです。

SFA/CRM双方のパフォーマンスをいかにして引き出すか、それが「SFA/CRMを生かすも殺すも」のキーポイントになりそうです。