デジタルマーケティングの勝敗を分けるのはセグメンテーションとターゲティングの精度と言われています。精度が高ければマーケティングの成功率が高まり、逆の場合はマーケティングの成功率が低くなります。ここでは精度の高いセグメンテーションとターゲティングのポイントを解説します。
セグメンテーションとは
セグメンテーションとは、市場を細分化すること。
デジタルマーケティングにおいてセグメンテーションが重要な理由として、次が挙げられます。
(1)消費者ニーズの多様化
かつての大量生産・大量販売の時代は、ユーザを細分化して商品訴求をしなくても売れました。このためマスメディアを使い、不特定多数のユーザに向けた販促活動を行うマスマーケティングが可能でした。しかし市場が成熟し、ユーザニーズが多様化した現代においては、マスマーケティングは市場の一部を占める「大衆消費財領域」でしか通用しなくなっています。現在主流のデジタルマーケティングで成功するためには、市場を細分化し、自社商品に適合するセグメントを見つけ出し、そのセグメントに向けたマーケティングをする必要があります。
(2)デジタルマーケティングの一般化
インターネットの普及により、企業は見込み客層の属性、興味・関心、購買行動などのデータをWebアンケート調査、情報提供サイトの会員登録、SNSなどで容易に入手できるようになりました。そうした中でデータの分類でユーザ層ごとに最適化した広告配信、リードナーチャリングなど高度なデジタルマーケティング手法が一般化しました。このマーケティングの成功率を高める上で、セグメンテーションは不可欠になっています。
セグメンテーションのポイント
精度の高いセグメンテーションを行うためには、適切な分類と評価が必要になります。その基準として次が挙げられます。
セグメンテーションの分類基準
セグメンテーションの分類は、一般に次の変数が基準として用いられます。
地理的変数(GeographicVariables)
地理的変数は、地理的な要素で市場を細分化する際の分類基準です。食品、衣料品、車など、地域特性により売行きの差が出やすい商品の分類に多く用いられます。
主な種類として次が挙げられます。
- 世界の国・地域……アジア、北米、欧州など
- 日本の地方…………北海道、東北、関東、中部、近畿など
- 人口密度……………都市部、郊外、農村部、山間部など
人口動態変数(DemographicVariables)
人口動態変数は、属性的な要素で市場を細分化する際の分類基準です。国や企業が発表する各種調査からデータが取りやすいので、最も多く利用される分類基準です。
主な種類として次が挙げられます。
- 年齢・性別…20代女性、30―40代男性など
- 職業…………公務員、会社員、自営業、士業など
- 所得…………300万円未満、300万―400万円、400万―500万円など
- 最終学歴……中学校卒、高校卒、専門学校卒、大学卒など
- 世帯規模……単身世帯、2人世帯、4人世帯など
心理的変数(PsychographicVariables)
心理的変数は、心理学的な要素で市場を細分化する際の分類基準です。
主な種類として次が挙げられます。
ライフスタイルや価値観……ブランド好き、価格に敏感、流行に無関心など
パーソナリティ………………社交的、内向的、野心的など
社会的階層意識………………上、中、中の上、中の下など
行動変数(BehavioralVariables)
行動変数は、人間の行動的な要素で市場を細分化する際の分類基準です。
主な種類として次が挙げられます。
- 使用場面……毎日使う、朝と夕方に使う、休日に使うなど)
- 商品知識……リピーターで商品知識は豊富、関心はあるが知識は少ない、商品を知らないなど
- 利用頻度……ライトユーザー、ヘビーユーザー、ミドルユーザー
セグメンテーションの評価基準
セグメンテーションが適切か否かを評価する基準として、一般に次の4Rが用いられます。
Rank(優先順位)
セグメンテーションで区分したセグメントを、自社の事業戦略に基づき順位付けの評価をします。
Realistic(規模の有効性)
マーケティングの対象とするセグメントに、十分な売上や利益を確保できる市場規模があるか否かの評価をします。セグメントの市場規模が小さければ、そこでのマーケティングは無意味と判断できます。
Reach(到達可能性)
マーケティングの対象とするセグメントで、自社商品供給の難易度を評価します。海外、山間部、離島など難易度の高さが自社進出の阻害要因になる場合があれば、逆に進出することでそのセグメントを寡占化できる場合もあります。
Response(測定可能性)
マーケティングの対象とするセグメントの市場規模、購買力、ユーザ特性などを測定できるか否かを評価します。測定不可能なセグメントは、マーケティング展開のリスクが高いと判断できます。
セグメンテーションとターゲティングの違い
セグメンテーションとターゲティングの違いは、セグメンテーションが市場を細分化するのに対し、ターゲティングは細分化した市場の中からターゲットにする見込み客層を選ぶところにあります。
セグメンテーションとターゲティングにより、成功率の高いマーケティングが可能になります。
ターゲティングの手法
ターゲティングの手法として、一般に次の3タイプが用いられます。
無差別型
セグメントはせず、市場全体をターゲットにする手法です。大量生産が可能な商材の場合、規模の経済性を働かせた価格競争ができる可能性があります。食品、洗剤などの大量消費材のターゲティングに向いていると言われています。
分化型
セグメントした市場で、商品ラインナップを拡充する手法です。セグメントした市場でのシェアアップが可能な反面、商品ラインナップの多品目・多点数化により生産コストが上昇するデメリットがあります。
集中型
単数または少数のセグメントを選択し、そのセグメントに商品を集中的に投入する手法です。対象にしたセグメントで強みを発揮でき、規模の経済性を働かせた価格競争ができる可能性があります。高額商品やニッチ商品のターゲティングに向いていると言われています。
ターゲティングの評価基準
設定したターゲティングを評価する基準として、一般に次の6Rが用いられます。
Realistic(市場規模)
設定したターゲットの市場規模の適正性を評価します。大き過ぎる場合はターゲットを絞り込む必要があり、小さ過ぎる場合はターゲティングが不適切と言うことになります。
Rate(成長性)
ターゲット市場の成長性を評価します。成熟期の市場はレッドオーシャン化しているので、新規進出の場合は断トツの差別化が必要になります。
Rank/Ripple Effect(ユーザの優先順位)
ターゲットにするユーザ層の順位付けを評価します。
Reach(到達可能性)
自社商品の供給範囲にどの程度のボリュームのターゲットが存在するのかを評価します。
Rival(競合状況)
ターゲット市場に競合状況を評価します。ターゲットを求めて強力な競合相手が市場へ進出した場合は苦戦を余儀なくされ、その対策が必要になります。
Response(反応の測定可能性)
ターゲット市場で自社のマーケティング効果の測定が可能か否かを評価します。
STPとSTP活用のメリット
STPとは、セグメンテーションとターゲティングで設定した市場において、自社の立ち位置を設定することです。競争優位のマーケティングを実施できるか否かはSTP設定の精度に左右されると言われています。
STP活用のメリットとして次が挙げられます。
- ユーザの属性とボリュームを把握できる……対象にした市場に、どんな属性のユーザがどの程度のボリュームで存在するかの把握が可能
- 自社の勝負土俵を明確化できる……対象にした市場の競合状況を把握できるので、自社の競争優位性を発揮できる土俵での勝負が可能
まとめ
ユーザ目線のペルソナ設定が重要なデジタルマーケティングにおいて、STPはマーケティング計画策定の前提条件になってきます。マーケターには初心者、ベテランの別を問わずSTPの正しい知識が必要とされています。