ビジネスシーンにおける3C分析とはビジネス戦略におけるマーケティングの基礎といっていい分析法です。元マッキンゼー日本支社長、現ビジネス・プレスクール大学学長大前研一氏が『The Mind of the strategist :The art of Japanese business』1982年で示した「戦略的三角関係(strategic triangle)」が由来といわれています。
3Cとは何か
基本となる3Cの紹介
マーケティング戦略を考えるうえで頭文字「C」始まる3つの要素、顧客・市場(Consumer)、競合(Competior)、自社(Company)のそれぞれをリサーチして戦略を考える手法です。
3Cの要素については以下の通りですが、最近ではこの3つに加え中間顧客(Customer)環境社会(Communty)の二つを加えた、5C分析が行われるようになっています。
ここではまず、3C分析について詳しく述べながら、5C分析についても言及できればと思っています。
【1】顧客・市場(Custmer)分析法
顧客・市場分析は最も基本になる分析です。顧客・市場を理解できないと自社の強みも弱みも分析することはできないからです。この顧客・市場分析には大別して「マクロ分析」「ミクロ分析」「顧客分析」の3つの手法があるといわれています。それぞれについてみていきましょう。
マクロ分析
自社を取り巻く外部環境を把握するためのフレームワークで「PEST分析」を用いて行うものだ。PESTとは政治的(Politics)、経済的(Economy)、社会的(Socciety)、技術的
(Technology)の頭文字です。主に自分の会社を取り巻く外在的な要因、自分たちではコントロールできない外部的環境を把握するためのフレームワークです。
マクロ分析により景気の動向や法律の改正運用、人口や流行の動向など社会的変化を見つけ出し、顧客や市場の動向を分析する分析法です。
ミクロ分析
会社の存在する業界の構造や構造的変化、動向を分析し、ビジネスへの影響を分析することです。業界内の競争の状況を解析して利益を出せるかどうか検討することなどがあげられます。
業界内のファイブフォース(5つの脅威)の分析などにより、自分たちの紹介内の脅威について5分割して分析し利益検討する分析です。業界内5つの脅威とは「業界内での競争」「業界への新規参入者」「代替品の存在」「買い手(顧客)の交渉力」「売り手(サプライヤー)の交渉力」などがあげられます。
顧客分析
マクロ分析、ミクロ分析で行われた情報が顧客のニーズや価値観にどれほど影響を与えているかを検討する分析です。商品・サービスに係る一般的な顧客動向を分析して、顧客の購買動向を把握します。大変有効な手段としてアンケート調査などがあります。
【2】競合(Competiter)分析
競合他社の売上高や市場能勢入率を始め競合している状況の分析、商品やサービスの強み、弱みなどを分析し、競合する企業の「結果」とその「理由」を分析します。
競合する企業のビジネス結果
企業の売り上げや利益率、市場占有率や顧客数といったビジネス上の成果を分析することです。同時に広告宣伝費の負担や競合企業の資産の活用法や社員一人当たりの利益率、顧客一人当たりの売り上げなど競合企業の分析を行います。
ビジネス結果のリユース
競合他社のビジネス上の効果の理由を分析して、営業方法や販売ルート、商品開発など自社で取り入れうる仕組みや区別化などあらゆる要素を見つけ出すことです。
【3】自社(Company)
「顧客・市場」と「競合」で行ってきた分析をもとに自社の分析を行います。自社の経済価値、希少性、模倣困難性、組織、経営資源、売上高、市場シェア、技術力、収益性、販売ルートなどできうる限りのポイントを挙げて自社の強みと弱みを深く理解することです。
自社の強みと弱みをしっかり理解したうえで自社製品・サービスの成功要因(KSF)を導き出します。このとき特にVRIO分析を活用するのが大きな自社分析の主眼といわれています。VRIO分析とは商品・サービスの「経済価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Inimitability)」「組織(Origanization)」の頭文字で、自社の経営資源にフォーカスした分析です。
【4】社内外の同時分析(SWOT分析)
3C分析により社内と社外の状況についてそれぞれ分析ができました。そればかりではなくこの自社の内外の状況を俯瞰的に分析して総合的な戦略やビジネスモデルを構築していかなければ本当の3C分析とは言えません。
3C分析の俯瞰的で総合的な分析法としてSWOT分析が存在します。これは3C分析ではじき出した問題を主に4つの観点Strengths(自社の強み)、Weaknesses(自社の弱み)、Opportunties(機会)、Threats(脅威)の視点で整理するやり方です。このSWOT分析が総合的な分析法の最も一般的といわれるやり方です。
SWOT分析は、経営管理理論でよく知られている戦略的計画です。主に企業の内部の長所と短所、および外部環境の機会と脅威を相互に分析することで、視野を広げます。また、定式化の重要な参照として使用することもできます。個人的には、個人の競争力やキャリアプランを分析するためにも使えます。構造は単純に見えますが、非常に複雑な問題を処理するために使えます。これは、意思決定者が状況を迅速に明らかにするのに役立つ非常に効率的で補助的なツールです。
【5】3C分析の事例
ここでは3C分析に基づき実施の飲食店の状況を分析してみようと考えます。新宿区西落合に新規店舗として展開したラーメン店です。30年来の名物店だったが都内の道路拡幅工事に伴いこの場所に移転してきました。昨今コロナ禍のため開店以来思うように客足が伸びず、苦労しています。
東京都新宿区西落合1丁目の「満天ラーメン」
- 顧客
- 客層
- 地域周辺の住民、サラリーマンが中心
- 競合
周辺の商店街はラーメン屋が少なく、最も近いラーメン屋は徒歩2分ほどにある駅ビル内の横浜系のチェーン店だけである。次の競合は徒歩10分新目白通り沿いのやはり横浜屋系の個人店だ。ここは固定客も多く、休日には行列ができるほどの混雑もある。基本的に地域密着という点では駅からも遠く、周辺住民とのつながりは薄い。さらに一店徒歩10分以上離れたところに個人の店舗があるだけで、地域性という点では競合店はない。
競合他社の強み弱み
強み
個人店舗という味の個性が際立ち、地域の飲食店としてのラーメン屋としては横浜屋系のチェーン店では強みをみせている。
弱み
個人店舗であるため知名度が低く、一度でも入店してもらわなければ味わいがわかりにくい。個人店舗の敷居の高さがある。
競合の特徴
ラーメン屋歴30年のキャリアと味の良さ。個性的で流されない頑固ないい味。昔ながらの東京ラーメンへのこだわりがある。
競合他社の強み弱み
チェーン店でだれがやってもできる。バイトを使ってもできるので、客の入りを心配しないで採算がとれる。原価率を抑えることができる。お客が入りやすいチェーン店の強みを持っている。客の入りやすさはあるが店員の個性がなく固定客にならない。
自社
自社の強み弱み
強み
味へのこだわりが見える個性的な味
弱み
個人店舗なので知名度がなく、敷居が高い。
どのような評価を受けているか
味わいのいいラーメンを食べさせるがお店に店主の個性がありすぎて入りにくい。味はいいのだが、もう一度行きたいと思わせるほどの際立った強い味わいはない。地域的に値段が高いので、高級感が出てしまっている。値段を払うほどの高級感は感じないのでどうしてもリピートが少ない。
【6】中間顧客(Customer)と地域社会(Community)
3C分析は営業戦略の基本的な分析法として定着しています。しかし、情報技術の発達や社会構造の変化からこれらの3Cに加え5Cの分析が行われるようになっています。ここでは残りの二つの「C」を紹介しておきます。
中間顧客(Customer)とは直接、製品やサービスを利用するわけではないが流通や小売り、販売代理店として製品やサービスを提供するために協力するビジネス上のパートナーを指します。ビジネスのアウトソーシングが進み、流通やサービスの提供に直接かかわるケースも少なくなってきています。これ欄関係企業も中間顧客としてとらえ、自社や競合と同じように詳細に分析する必要が生まれています。
地域社会(Community)もマーケティングを考える際の重要な要素になってきています。人口の流動や流行、交通事情の変化、世論の動きもマーケティングの少なからぬ影響を与えるようになっています。3C分析を基本としながらもビジネスモデルの構築には多様な要素が必要になってきている昨今なのです。
まとめ
ビジネス戦略における「3C分析」はマーケティングの土台となっています。ビジネスの戦況分析の中で最も基本といっていいやり方です。市場や顧客などの環境は常に変化していくものですが、ビジネスを展開するうえでは欠かせない分析法といっていいです。
技術革新が進み、新しい商材が生まれても、サービス提供などの分野においても適応されています。また、Webマーケティングなどの分野でのビジネス戦略でも活用されています。
戦略的な分野で使われることはもちろんですが、既存の商材への改善提案を行うためにも使用されているので、今日3C分析を用いずしてビジネス戦略は語れないといっても過言ではありません。