初心者からベテランまで、幅広い階層のウエブサイト管理者の間で人気なのが「WordPress」です。他のサイト制作ツールにない使い勝手の良さが受けています。しかしこの便利なWordPressを使いこなすためには、やはり知っておくべきことがいくつかあります。
WordPressとは
WordPressとはウエブサイトやウエブページの制作ができるCMS(コンテンツ管理システム)の1つ。オープンソースで開発された無料のソフトウェアツールでもあります。
WordPressは当初、ブログ制作用のツールとして開発されました。しかし汎用的な文書作成ソフトでウエブページが制作できる便利さが魅力となり、今では個人ブロガーから企業・官公庁・団体まで世界中41%のウエブサイトにWordPressが導入されています。
WordPressが世界中41%のサイトで利用されている理由
ウエブサイトやページの制作には昔から多数のツールが提供されています。その中で無料とは言えWordPressがなぜ41%ものサイトに導入されているのでしょうか。その主な理由として次が挙げられます。
(1)プログラミング知識がなくてもページの作成・追加・更新ができる
WordPressはHTML/CSSのプログラミング知識がなくても、ページの作成・追加・更新が文書作成ソフトと同じ操作感覚でできます。画像のページ挿入、タイトル・中見出しの装飾などもワンクリックで済みます。
またプログラミング知識があるサイト管理者の場合は、ページの作成・追加・更新などの作業時間の大幅短縮が可能になります。
(2)機能拡張が容易
WordPressには「プラグイン」と呼ばれる追加機能が用意されています。自社サイトの用途やコンテンツ公開目的に合わせ、機能拡張が容易に行えます。利用度の高いプラグインとして次が挙げられます。
- SEO対策機能
- サイトマップ自動生成機能
- サイト表示速度高速化機能
- コメントスパム防止機能
- 問合せフォーム作成機能
- スマートフォン・SNSとの連携機能
プラグインのインストール・アンインストールはWordPressの管理画面でのワンクリック操作で行えます。機能拡張におけるこのような操作性の良さもWordPressの魅力の1つと言えるでしょう。
(3)コーポレートサイトだけではなくサービスサイトも開設可能
プラグインの中には予約システム、カード決済システム、商品カートシステム、会員ページ作成システムなどの営業向け追加機能もあります。これらを使えばクリニック、美容院、飲食店、宿泊施設、スポーツクラブ、EC・オンライン販売など多種多様なサービスサイトも容易に開設できます。
(4)デザイン変更が容易
WordPressには「テーマ」と呼ばれるページデザイン用のテンプレートが約8000点用意されています。
ページデザインはページの見やすさや使いやすさを左右するので、通常のサイトではウエブデザイナーがその専門知識と経験を駆使し、時間をかけて制作しています。しかしWordPressの場合はプラグイン同様、管理画面からテンプレートを選べばワンクリックで着せ替え人形のように簡単にデザインやその変更ができます。
ウエブデザインに関する専門知識は不要なので、デザイン感覚があるサイト管理者ならこの作業も自ら行えます。
WordPressの主な機能
オープンソースで世界中のウエブエンジニアが開発に参加しているWordPressは頻繁にバージョンアップされています。現在提供されている最新バージョンは「5.7」となっています。このうち汎用性が高く、したがって利用頻度の高い機能として次が挙げられます。
- 管理画面機能
HTML/CSSのプログラミング知識がなくても、ページの作成・更新・追加、ページに挿入する画像の選定、ページ内の画像削除、コンテンツへのアクセス数確認などの操作が、すべて管理画面で一元的に行えます。ページ作成におけるHTMLのタグ付け、FTPによるサーバへのページ挿入画像アップロード、アクセス解析ツールによるアクセス数確認などの面倒な操作が不要です。
(2)ユーザ権限管理機能
例えば自社サイトを複数の社員で管理する場合、それぞれの社員に次の管理権限を設定できます。したがって大規模なサイトもスムーズに運用できます。
- 管理者……WordPressのすべての機能を利用できる最上位のサイト管理者
- 投稿者……ページの作成・更新・追加ペーなどはできるが、ページ削除はできないサイト管理者
- 寄稿者……ページ作成・更新・追加などの文章下書きができるが、サイトアップができないサイト管理者
(3)ページとページ構成素材の個別保存機能
WordPressではウエブページ作成に必要なHTML/CSSを始めとするプログラミングは、サイト側のサーバにテンプレート形式で保存されています。一方、テーマ、ページ挿入画像などのページ構成素材はWordPress提供側のデータベースサーバ「MySQL」に保存されています。
これによりMySQLからダウンロードしたページ構成素材をサイト側のページ作成のテンプレートに展開すれば、プログラミング知識がなくてもページ作成・更新ができる仕組みです。
サイト管理者はページを作成・更新する度にページデザインをする、ページデザインを更新する度にコンテンツを書き替えるなどの手間から解放されます。その分、サイト管理者は品質の高いコンテンツ作りや新しいコンテンツ企画に専念する時間を取ることができます。
WordPressを導入する前に知っておくべきこと
(1)サーバ知識が必要
WordPressを利用するためにはサイト側のサーバにWordPressの「PHPプログラム」をインストールする必要があります。このインストールにおいてはLinux、Webサーバ、データベース、PHPなどのサーバ知識が必要になります。この知識がないとWordPress利用開始後の機能拡張、WordPressのバージョンアップなどに適切な対応ができない可能性があります。
(2)本格的なカスタマイズにはWordPress専門知識が必要
プラグインやテーマを使ったいわゆる「お仕着せ」のサイト運用においては、プログラミングを始めとする専門知識は不要です。しかし自社オリジナルのページを作る、自社にとってより使い勝手の良いサイトを作るなどWordPressを本格的にカスタマイズする場合は、WordPressが提供していない機能やデザインを併用しなければならないので、どうしてもプログラミング知識とソースコードを始めとするWordPressの専門知識が必要になります。
(3)個別サポートを受けられない
WordPressはオープンソースで開発された無料ソフトウェアなので、システム停止・保存ファイル破損を始めとする不具合が生じた際にサービスエンジニアを派遣する、電話サポートをするなどの個別サポートを受けられません。WordPress開発者や利用者が参加しているWordPressの日本語コミュニティもありますが、ここはWordPressの開発や利用に関する意見交換の場なので、個別サポート対応には不向きと言われています。
結局、不具合が生じた際はWordPressに関する掲示板やネット上の意見を参考に、自社の力で不具合を解決するほかないようです。
(4)ページ表示速度が遅い
HTMLで制作されたページはアクセスがあると、HTMLページをウエブサーバから読み込むだけなのでページ表示はほぼリアルタイムで行われます。しかしWordPressの場合は、アクセスがある度にウエブサーバからアクセス目的のデータを読み込み、そのデータをページに展開してから表示と言う手順を踏むので、これらの手順を踏む間にどうしてもタイムラグが生じます。自ずとHTMLページと比べるとページ表示速度が遅くなります。表示速度の遅いページは直帰率が高いと言われています。
表示速度を上げるには、データ容量の大きい画像や動画の使用を必要最小限にする、プラグインのサイト表示速度高速化機能をインストールするなどの対策が必要です。
(1)ツールが脆弱になり勝ち
WordPressはメリットが多い反面、ツールが脆弱になり勝ちと言うネックを抱えています。これはウエブツール開発の初心者から経験豊富なベテランまで幅広い階層のウエブエンジニアがWordPressの開発に参加しているオープンソース開発方式特有の問題と言えます。
したがって、サイト管理者は常にWordPressを最新バージョンにアップデートする、最新バージョンのセキュリティ対策プラグインにアップデートする、データバックアップの頻度を高めるなど、ツールの脆弱性に対応する必要があります。
まとめ
ウエブサイトは現在、企業の大小を問わずコーポレート情報の発信媒体、販促媒体としてその重要性が増しています。しかしウエブエンジニアの採用が難しい中小企業や個人営業事業者にとって、ウエブサイトの開設・運用はハードルが高いと言われています。
そのことで悩んでいる経営者にとって、WordPressは大企業とのウエブ活用格差を縮める手段の1つになる可能性があるでしょう。