近年、多くの企業が自社サイトのコンテンツ制作・管理にCMSを導入しています。それはコンテンツ制作・管理に革新的な合理化をもたらせたからだと言われています、これから導入を検討しているサイト管理者や、導入済み企業のサイト管理者がCMSを使いこなすために知っておきたいポイントは何でしょうか。
CMSの革新性とは
CMS(Contents Management Systemːコンテンツ管理システム)とは、ウエブサイトのコンテンツの制作・管理を行うソフトウェアツールのこと。
CMSが開発される前は、ウエブエンジニアがHTML/CSS(ウエブページの記述言語)を用いてコンテンツの制作を行っていました。また、既存コンテンツを更新・追加する際はHTML/CSSを用いて既存コンテンツページのテキスト・画像データを書き替え、他ページからのリンクを張り替えるなど、大変な手間がかかっていました。
ところがCMSが開発されたことにより、コンテンツの制作・管理はHTML/CSS始めとするウエブページに関する専門知識が必要な部分はすべてCMSが行うようになりました。このためコンテンツ制作者はテキスト・画像データをコンテンツページに挿入するだけで自社サイトのコンテンツ更新・追加ができるようになりました。
またウエブサイト内のナビゲーション、新着情報表示、リンクの更新なども自動的にできるようになりました。
こうしたCMSの登場により、ウエブサイトのコンテンツ制作・管理に関する大半の作業が大幅に省力化され、専門知識がなくても文書作成ソフトの操作スキルがあれば、難しかったコンテンツの制作・管理が誰でも可能になりました。
CMSの基本機能
CMSには30点以上の機能が搭載されています。このうち大半のCMS製品に搭載されている基本機能として、次が挙げられます。
(1)コンテンツ編集機能
コンテンツ編集を通常の文書作成ソフトと同じ操作感で、編集過程を視認しながら行えます。
(2)ユーザ管理機能
自社サイトのコンテンツ編集に携わる社員を制作者、承認者、公開者などに責任分けしてそれぞれ権限を付与し、コンテンツ制作の分業化を図ることができます。
(3)追加機能
「プラグイン」と呼ばれる追加機能でコンテンツ表示速度高速化、SEO対策強化、セキュリティ対策強化、問合せフォーム作成、決済フォーム作成など自社サイトの機能拡張が図れます。
(4)マーケティング機能
大半のCMS製品には様々なマーケティング機能が搭載されています。その主な機能として次が挙げられます。
- アクセス解析……セッション、平均セッション時間、ユニークユーザ数、ページビュー数、ランディングページ、直帰率などの把握ができるので、自社コンテンツの魅力度や品質の推測、ユーザ目線からの改善点発見などに役立つ
- アンケート・メールマガジン配信……ウエブアンケートやメールマガジンの作成・配信ができ、アンケート回答結果はCSVファイルで確認できる
- 問合せ・FAQ作成……自社商品に関する問合せと回答、過去の問合せ・回答を一覧表化したFAQを作成でき、自社商品の市場のリアルな反応を測定できる
CMSの製品タイプ
CMSには様々な製品があり、その数は一説に200点以上と言われます。このCMS製品は次の3タイプに大別できます。
(1)オープンソース型
プログラムのソースコードが一般公開され、世界中のウエブエンジニアが参加して開発したCMSです。
オープンソース型CMSには次のメリットがあります。
- ライセンス取得費が発生しなので低コストかつ短期間で初期導入できる
- 開発ベンダの倒産などで利用不能になるリスクがない
- 非商用製品にも関わらず、中には有償製品より高品質な製品がある
反面、次のデメリットもあります。
- 講習、インストラクター派遣などのベンダサポートなしでCMSを操作するリテラシーが必要
- コンテンツデザインはデザイン用テンプレートの数に制約される
- 海外製品では日本語マニュアルがないものもある
- 不具合が生じた時はベンダのサポートを受けられないので、自力で解決しなければならない
(2)独自開発型(オンプレミス型)
CMS導入に必要なサーバ、LANなどの設備をユーザ企業が社内に設置し、CMSベンダとの連携で自社サイト向けに特化して開発したCSMです。
独自開発型CMSには次のメリットがあります。
- 自社サイト向けに特化しているので、自社サイトとCMSの相性が良く使い勝手が優れている
- 自社オリジナルのコンテンツの制作・公開ができる
- セキュリティ対策が強固
反面、次のデメリットもあります。
- 初期導入、運用・保守、ライセンス取得費などのコストが高い
- 開発に時間がかかる
(3)クラウド型
製品がパッケージで提供され、製品をインストールしたサーバはベンダ側に設置し、使用の都度必要なツールをベンダ側サーバからダウンロードして利用するCMSです。
クラウド型CMSには初期導入、保守、バージョンアップなどはベンダ側で行うので、低コストで導入・運用できるメリットがあります。
反面、次のデメリットもあります。
- 作成・更新・追加できるコンテンツページ数の制限が製品ごとに異なる
- ECサイト向けでは製品ごとに商品数の制限が異なる
- パッケージの範囲内でしかカスタマイズできない
CMSの主な導入効果
CMSの導入効果には様々なものがありますが、導入のコストパフォーマンスに直結する主な効果として次が挙げられます。
(1)コンテンツ制作の内製化ができる
CMSを導入すると、コンテンツ制作の専門知識がない社員でもコンテンツの制作・更新・追加ができるので、これらの作業をウエブサイト制作会社に依頼する必要がなくなり、外注コスト削減や迅速なコンテンツ公開が可能になります。
(2)ウエブサイト運営の効果が高まる
CMSを導入するとコンテンツ制作を内製化できるので、外注コストを気にせず更新頻度を高められるようになります。このためタイムリーなコンテンツ公開によりユーザ満足度や見込み客への訴求力が増し、ウエブサイト運営の効果が高まります。ひいてはウエブサイト運営のコストパフォーマンスも向上する可能性があります。
(3コンテンツ制作の分業体制を構築できる
中堅規模以上の企業においては、コンテンツごとに管理担当部門が異なることが少なくありません。例えば商品関連のコンテンツは販促部門が、会社案内・IR関連は広報部門が、人材採用関連は人事部門が管理と言った具合です。各部門にコンテンツ制作の専門知識を持った社員がいれば問題はないのですが、そのような企業は稀と言えます。
このためCMS未導入企業は、コンテンツ制作・更新の度にウエブサイト管理者が担当部門からの依頼を受けてウエブサイト制作会社へコンテンツ制作・更新作業を発注。納品されたコンテンツを担当部門が検品し、問題がなければそれを公開の手順を踏んでいるのが一般的と言われています。
CMSを導入すればこのような煩瑣な手順を解消できます。すなわちコンテンツ制作の専門知識がない社員でもコンテンツ制作ができるので、担当部門が直接コンテンツの公開・更新をする分業体制構築が容易になるでしょう。また、煩瑣な手順がなくなることで、コンテンツ制作コストの圧縮も可能でしょう。
一方、CMSには注意すべきこともあります。
(1)セキュリティ対策が弱いと攻撃されやすい
大半のCMS製品には、基本機能として「ユーザ管理機能」が搭載され、制作者・承認者・公開者別の権限とID・パスワードを設定できるようになっています。しかし例えば、容易に見破られるID・パスワードを設定していると、悪意のハッカーにサイト内へ容易に侵入され、サイト全体が危険にさらされるリスクがあります。
(2)CMSは自社オリジナルのコンテンツ制作が困難
独自開発型を除きCSM製品は基本的にツールがパッケージで提供されています。このためパッケージにないオリジナルデザインのコンテンツ制作は困難になります。
(3)CMSに不向きなサイトがある
CSMはサイトにより向き、不向きがあります。不向きなサイトは、
- デザインで競合他社とコンテンツを差別化したい
- ページ表示速度が最優先
- コンテンツの更新頻度が少ない
- コンテンツの点数が少ない
- 強固なセキュリティが必要
などのサイトと言われています。CMSを導入する際は、これらの事項に注意が必要です。
まとめ
CMSを導入する際は、
- CMS導入目的の明確化
- 自社のコンテンツ制作に必要な機能
- 自社サイトの運営規模
- 保守サービスの有無
- 不具合が発した場合のベンダサポートの有無
など確認する必要があります。その上で前述の注意事項を踏まえ、自社の「CMS導入要件」を定め、要件に適合した製品を選べば、導入の失敗リスクも回避できるでしょう。