クリニックは地域医療の中核として重要な役割を担っています。ところが帝国データバンクの発表によると、クリニックの廃業・倒産件数が2021年1月から6月までの累計で267件となり過去最高を記録しました。医療業界の競争激化が背景と見られています。このためクリニックは真剣に集客(集患)増に取り組む必要が生じています。この対策としてWeb集客が注目されています。
集客できないクリニックの特徴
現在のクリニックにおいては、新患者が増加しているクリニックとそうでないクリニックの二極化が進んでいると言われます。そして新患者が増えない・患者が減る一方のクリニックには、次の共通的な特徴が見られると言われています。
- クリニックの認知度が低い
- ホームページはあってもクリニックの特徴や医師のプロフィールや実績が分からない
- 利便性が悪い
- 診察結果や治療に対する医師の説明が不十分
クリニックの廃業・倒産が増えている背景には、こうした旧態依然のクリニック経営も一因になっているようです。
患者はどうやってクリニックを探し、訪れるのか
現在の患者が症状を自覚してクリニックを探す時、
- インターネットでクリニックを探す
- 自分の症状を診察してくれるクリニックを知る
- クリニックのWebサイトにアクセスしてクリニックの経営方針、医療体制などを調べる
- クリニックを訪問し診察を受ける
と、「探す」、「知る」、「調べる」、「訪問する」の4段階の行動をとるのが通常と言われています。患者のこの行動の中で、クリニックの集客において最も重要なのが、患者の「調べる」行動に対する適切な対応と言えます。
では患者はクリニックを調べる時、どんな情報を求めているのでしょうか。その基本的な情報として、次が挙げられます。
- 診療に関する医師の専門的な知見と分かりやすい説明
- 診察待ち時間軽減のサービス体制
- 診療時間帯、自宅や公共交通機関の最寄駅からのアクセス、乳幼児連れの診療対応などの利便性
- 待合室のレイアウト、インテリアなど診察待ち時間の快適性
- 診察結果や治療方針の説明、患者の疑問・質問などに丁寧に分かりやすく答えるホスピタリティ
こうした患者の情報ニーズ応えていないクリニックのWebサイトは、集客力がほとんどないサイトと言えます。
クリニックの認知度を上げるには
クリニックの集客力は認知度に左右されます。すなわち前節で述べた、患者がインターネットでクリニックを探した時に、その患者の目に留まる確率です。
この確率を上げるためには、自院のWebサイトがGoogleキーワード検索で検索結果の1ページ目に表示される必要があります。検索結果で自院のWebサイトが2ページ以降に表示されると、患者の目に留まる確率は限りなくゼロに近くなります。これを防ぐために自院Webサイトの最適化が必要なのですが、その前提として「3C分析」が重要になります。
3C分析をクリニック経営になぞらえると、
- Customer(患者と通院圏)…患者の属性・医療ニーズ・通院圏
- Company(自院)……………自院の現状・規模・経営資源・強み
- Competitor(競合)…………他院の現状・規模・経営資源・強み
クリニックが自院のWebサイトの認知度を上げるためには、まずこの3C分析に必要な情報を収集し、分析する必要があります。3Cで次の分析をすると、自院の立ち位置把握が可能になります。
(1)患者の属性・医療ニーズ
患者の属性や医療ニーズは、自院が立地する市町村と隣接市町村の「人口・世帯統計」、「暮らし」、「福祉・健康」などの統計データから容易に分析できます。
(2)自院の強み
自院の診療科目、専門医認定科目、提携大学病院、医師・看護師・医療技師のキャリア、医療設備など医療サービス品質に関する自院のアピールポイントを洗い出せば、自院の強みを把握できます。
(3)競合他院の情報
競合他院の情報も市町村の「暮らし」、「福祉・健康」などの統計データからある程度把握できます。さらに競合他院のWebサイトを閲覧すれば、その情報から真の競合も把握でき、競合との差別化ポイントを打ち出せるでしょう。
この3C分析で自院の立ち位置が明らかになれば、患者の医療ニーズ対応方針や競合との差別化ポイントも明らかになります。
後は自院の強みと競合との差別化ポイントを最大化し、認知度が高いWebサイトを構築するための「Webサイトの最適化」を図るだけです。
クリニックのWebサイト最適化のポイント
クリニックのWebサイト最適化は、一般に次がポイントになります。
(1)コンテンツの充実
自院のWebサイトの認知度をいかに高めても、コンテンツが貧弱では患者に直ぐ直帰(アクセスしたサイトからの離脱)されるので、集客効果は見込めません。したがってまずコンテンツの充実が重要です。
クリニックの場合は、第1節で述べた「患者の調べる」行動に対応した、
- 診療に関する医師の専門的な知見と分かりやすい説明
- クリニックの医療体制
- 診察待ち時間軽減のサービス体制
などの患者が知りたい情報と、自院のアピールポイント・競合との差別化ポイント(ただし競合の実名出しはNG)を漏れなく詳しくかつ簡潔に、そして分かりやすい文章で説明することに尽きると言えます。
(2)SEO対策
2番目に重要なのが「SEO対策」です。
SEO対策(Search Engine OptimizationːGoogle検索エンジン最適化)とは、患者がクリニックを探すためのGoogleキーワード検索において、Google検索結果の1ページ目に、自院のWebサイトを表示させる対策のことです。自院の認知度を高めるキーポイントでもあります。
患者がクリニックを探す時、
- 診療科目+地域名
- 病名+地域名
- 症状+地域名
などのキーワードで探すのが通例です。したがって自院Webサイトのキーワードは、患者が真っ先に使うと思われるキーワードを設定するのが効果的です。
なおコンテンツ対策においては、こうしたキーワード対策の他に、
- クローラがWebサイト内を回遊しやすいようにURLコードを整理する「内部対策」
- 他のサイトからリンクを貼られる「被リンク対策」、
- コンテンツの専門性、コンテンツの有益性、内容が信頼できるコンテンツの3要件を満たした「コンテンツ対策」
が必要になります。
(3)MEO対策
「MEO対策」も認知度を高めるために重要です。
MEO対策(Map Engine Optimizationːマップエンジン最適化)とは、GoogleマップにおけるGoogleマイビジネスの地域検索において、自院のWebサイトを上位に表示させる対策のことです。
MEO対策は無料のGoogleマイビジネスに必要事項を記入して登録するだけで完了します。これによりGoogle Mapマップから自院Webサイトへの流入も見込めるので、自院認知度の確率が高まるでしょう。
(4)クリニック情報ポータルサイトへの登録
クリニック情報ポータルサイトへの登録(有料)も認知度を高める上で有効です。
患者の中にはGoogleキーワード検索ではなく、まずクリニック情報ポータルサイトにアクセスし、そこからクリニックのWebサイトに流入してくるケースも多いからです。
(5)サイト表示速度の最適化
キーワード検索した患者に「調べる」行動をしてもらうためには、患者が検索結果表示画面でクリックしたWebサイトの表示速度がキーポイントになります。
表示速度が遅いと患者の直帰率が高まります。直帰を防ぐには表示速度を2秒以下にする必要があります。
(6)レスポンシブ対応
レスポンシブ対応とは、患者がスマホで自院Webサイトへアクセスした時に、スマホの小さな画面でもサイトのコンテンツを快適に閲覧できるよう、表示画面を自動的にスマホ画面用に切り替えることです。
レスポンシブ対応をすることで、スマホからアクセスした患者の集客取りこぼしを防止できます。
まとめ
クリニックの集客力を高める基本は、クリニックに対する患者の情報ニーズに的確に応えることと言われています。そのためには自院をどんなクリニックにしたいのか、どんな地域医療サービスを提供したいのか、医療を通じてどんな地域貢献をしたいのかなどの経営方針を明確化する必要があります。
経営方針を明確化することにより患者の情報ニーズに的確に応えられるWebサイト作りが容易になり、結果的に集客力が高いWebサイトに育てられるでしょう。