オンリーワン商品(独創的商品)は、オンリー性が高ければ高いほど市場から受け入れられ難い、市場浸透に時間がかかるなどの宿命を負っています。そんな商品の有用性を逸早く見抜き、その良さを周囲に知らせ、早期普及の推進役になっているのが「アーリーアダプター」です。ここでは販促関係者が知っておきたいアーリーアダプターの具体像と見つけ方を解説します。

アーリーアダプターとは

アーリーアダプターとは市場に新たに登場した商品を早期に購入し、その良さを周囲に知らせるなどで他のユーザにその商品の購買意欲を湧かせるユーザ層のことです。

アーリーアダプターは、時代に先駆けた新しいものを自らの判断で取り入れる先見性を持ちながら社会的常識を持っているので、市場におけるオピニオンリーダー的存在と見られています。このため、「アーリーアダプターが商品普及の成否を決定する」とまで言われています。

アーリーアダプターには、次の特徴が見られます。

• 流行に敏感
• 周囲への影響力が強い
• 商品に独自性を求める

アーリーアダプターは実質的イノベーション推進者

アーリーアダプターは、1962年に米国スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授が提唱した「イノベーター理論」で定義されたユーザ層です。

ロジャース教授は同理論で商品の普及に関わるユーザ層を5つに分類し、各ユーザ層を次のように定義しました。

• イノベーター（Innovators：革新者）……市場開拓期のユーザ層。市場全体の2.5％を占める。好奇心が強く新奇な商品に目がない。商品の品質やベネフィット(有用性や恩恵)には無関心
• アーリーアダプター（Early Adopters：初期採用者層）……イノベーターに次ぐ市場開拓期のユーザ層。市場全体の13.5％を占める。流行に敏感で常に情報収集をしており、商品に対するビジョン(先見の明)を持っている。商品の品質やベネフィットを独自の評価基準で判断できる
• アーリーマジョリティ（Early Majority：前期追随者層）……市場成長期のユーザ層。市場全体の34％を占める。市場で商品の普及が始まると購入し、市場成熟の後押しをする。市場成長期と成熟期の架け橋のような存在で、「ブリッジピープル」とも呼ばれる
• レイトマジョリティ（Late Majority：後期追随者層）……市場成熟期のユーザ層。市場全体の34％を占める。新商品には懐疑的で、普及率が50％を超えてから購入する。「フォロワーズ」とも呼ばれている
• ラガード（Laggards：遅滞者層）……市場衰退期のユーザ層。市場全体の16％を占める。考え方が保守的で、流行商品には無関心。商品が必需品化してから購入する。マーケティング調査の対象にならないケースが多い

上記の定義から、新商品が普及するか否かの分岐点がイノベーターとアーリーアダプターを合わせた「普及率16%」と言われています。市場で16%のユーザを獲得すれば、商品開発の投資回収の目処が立ち、本格的な販促展開ができ、成長期への移行を図れるからです。

そんな中でアーリーアダプターは、この移行に大きな役割を果たします。

イノベーターは商品の新奇さに注目しますが、アーリーアダプターは商品の品質やベネフィットに注目します。それを自分で確かめたら周囲に情報を発信し、アーリーマジョリティの購入を促し、商品が市場でブレークスルーするきっかけを作ります。

このためアーリーアダプターは「実質的イノベーション推進者」と言われています。

アーリーアダプターが先導した新商品成功例

アーリーアダプターが新商品を普及に導いた有名な例として、次が挙げられます。

• メルカリ

メルカリは2013年7月に営業を開始したネット上の中古品売買マッチングサービス。

メルカリがサービスを開始する前に、同じマッチングサービスとして「ヤフオク(ヤフーオークション)」が先行、中古品売買市場で大きな存在になっていました。

その市場でメルカリが成功したのは、売買のハードルを下げたことによりアーリーアダプターの支持を受けたのが要因と言われています。

ヤフオクはオークション形式をとっていたので、マッチング成立までに時間がかかり、値付けには駆け引きが必要で、落札のタイミングを見極めるには経験が必要でした。対してメルカリはフリーマーケット形式をとったので、オークション経験のない人が売買できる気軽さがあり、「不要品を売りたい・買いたい」ユーザの潜在ニーズを顕在化させたと言えます。そのアーリーアダプターになったのがフリーマーケットの常連客たちでした。

(3)Airbnb

Airbnbは2008年に米国サンフランシスコで営業を開始した民泊仲介サービスです。

宿泊先を探す旅行者と自宅を旅行者に貸したい人のマッチングをするサービスで2019年9月現在、世界192カ国、33000都市で利用されています。

Airbnbのアーリーアダプターは、旅行会社が企画したパッケージ旅行をしたくないユーザでした。Airbnbはアーリーアダプター獲得するため、広告サイト「Craigslist」」で、Airbnbのホスト(宿泊施設提供者)が宿泊客を募集できるようにしました。

その結果、アーリーアダプターの間で「宿泊先はAirbnbで予約」が定着し、世界中にAirbnbのサービスが普及しました。

新商品の販促においてアーリーアダプターが重要な理由

新商品の販促活動においてアーリーアダプターが重要な理由として、次が挙げられます。

1.ロイヤルカスタマーとしての存在感

商品に対する独自の評価基準を持つアーリーアダプターは、口コミや比較サイトの評価を気にせず、「自分の眼鏡に適った」商品を購入します。商品のベネフィットや性能に価値を見出します。このためアーリーアダプターの多くがロイヤルカスタマー(特定企業や特定商品に対する忠誠心の高い顧客)になる傾向があります。

ロイヤルカスタマーの増加と比例して商品に対する市場での認知度と信頼性が高まり、それがアーリーマジョリティを引き付け、商品を成長軌道に乗せることができます。

2.市場に対する影響力

アーリーアダプターは、一般ユーザながらも商品に対するビジョンと独自の評価基準を持っているので、専門家並み商品鑑識眼を具えています。このため情報発信力が強く、その情報は信憑性が高いのでメディアなどでしばしば取り上げられ、やがて商品が市場でブレークスルーします。

「ヒットした商品の陰にはアーリーアダプターがいる」と言われるゆえんでもあります。

アーリーアダプターの見つけ方

アーリーアダプターを見つけるには、次の属性を持ったユーザに着目する必要があります。

(1)「こんな商品があればいいな」とアンテナを張っているユーザ

生活の快適さを求めて「こんな商品があればいいな」と考え、その商品の登場を待っているユーザです。このようなユーザは、新商品発売に伴うアンケート調査の質問項目を工夫することで容易に発見できるでしょう。

(2)ベネフィットを重視するユーザ

商品のベネフィットを重視するユーザは、新商品の販促活動でベネフィトを客観性と科学的根拠に基づいた説明を分かりやすくすることで、アーリーアダプターの役割を果たしてくれるようになります。

(3)インフルエンサー

特定分野の専門性や専門知識を持っているインフルエンサーの多くは、アーリーアダプターとしての特性も持っています。

アーリーアダプターに適しているのは、メガインフルエンサー(フォロワー100万人以上)ではなくマイクロインフルエンサー(フォロワー1―10万人規模)だと言われています。

それは彼らの大半が著名人ではなく、様々な分野で一般人として活躍しながら商品の鑑識眼が高いいので、メガインフルエンサーやミドルインフルエンサーと同じエンゲージメントを有しながらも一般ユーザとの距離感が近いからです。

新商品の販促においては、マイクロインフルエンサーに新商品の紹介をしてもらう企画も重要でしょう。

まとめ

インターネットとSNSの普及により、主体的な購買行動をするユーザが多い今日、デジタルマーケティングにおいて再び重視されているのがアーリーアダプターです。

自社商品のPRに適したアーリーアダプターを発掘し、商品の魅力やベネフィトを効果的に訴求する販促活動が重要になっています。