アパレル業界のEC化率は他業界のEC化率より高いと言われています。それだけに業界内での競争は熾烈です。アパレルEC競争で勝ち残るためには様々な販促活動が必要になります。その活動はアパレルECサイトの集客が前提になります。集客ができなければどんなに優れた販促活動も無に帰すからです。この集客において重要で、また効果があると言われているのがSEO対策と言われています。ここではアパレルECサイトにおけるSEO対策のポイントを中心に解説します。
集客力が高いアパレルECサイトの特徴
集客力が高いアパレルECサイトには、共通した特徴が見られます。その特徴として次が挙げられます。
ペルソナを設定している
集客したいターゲットユーザの具体像を明らかにした「ペルソナ」を設定し、ペルソナに有益なコンテンツを提供することで、購入率の高い集客に成功しています。
検索キーワード対応した個別のコンテンツを提供している
アパレルECサイトにアクセスしてくるユーザの場合、例えば「服のコーディネートを知りたいユーザ」と「服を探しているユーザ」は、服の情報ニーズが異なります。このため前者は「ジャケット スラックス コーディネート」のキーワードで情報検索をするでしょう。後者は「ジャケット 格安(またはオーダー品) のキーワードで情報検索をするでしょう。
この情報ニーズに対し、例えば前者の場合は「ジャケットとスラックスのコーディネートはこれで完璧」、後者の場合は「5000円以下で買えるお洒落なメンズジャケット20選(またはお洒落なオーダージャケットフェア開催中)」などのコンテンツを提供することで、自社サイトの集客力を高めています。
こうしたアパレルECサイトの特徴を十二分に活かし、集客力を最大化するために重要なのがSEO対策と言えます。
そもそもSEO対策とは
SEO(Search Engine Optimizationː検索エンジン最適化)対策とは、ユーザのキーワード検索結果の上位に自社コンテンツを表示させる対策のことです。現在は次の4つの対策が主になっています。
(1)内部対策
内部対策は、クローラがWebサイト内を回遊しやすいようにURLコードを整理することです。そのためには、
- サイトの階層構造がシンプルである
- 内部リンクが整理されている
必要があります。
(2)キーワード対策
キーワード対策は、ユーザが求めている情報を容易に検索できるよう、コンテンツのキーワードを適切に設定することです。
そのためにはキーワード調査ツールで、ユーザは「どんな情報をどんなキーワードで」検索しているかを調査する必要があります。
なお「SEO対策=キーワード対策」と思われがちですが、キーワード対策はSEO対策の1つに過ぎません。
(3)被リンク対策
被リンク対策は、他社サイトからリンクを貼られることです。
被リンク対策をするには、情報価値が高い良質なコンテンツを制作・提供することが重要になります。
(4)コンテンツ対策
コンテンツ対策は、ユーザにとって有益なコンテンツを提供することです。
これに関してGoogleはWebサイトの品質評価基準の1つとして「E-A-T」を定めており、SEO対策の中で最も重要と言われています。
E-A-Tとは次の3要件を満たしたコンテンツとされています。
Expertise(専門性)
コンテンツが「特定分野に特化しているか」の要件です。
あらゆる分野のコンテンツを取り揃えている百貨店的なサイトより、専門店的なサイトのコンテンツの方がユーザにとって有益という考え方です。その意味でアパレルECサイトのコンテンツはこの要件をクリアしていると言えます。
Authoritativeness(権威性)
第三者から見て「有益性のあるコンテンツか」の要件です。
この要件においてはコンテンツだけではなく、当該コンテンツの発信者が「どのような組織に所属する誰なのか」も評価対象になります。
例えば新型コロナの予防や治療に関し、感染症に関する専門知識のない人が自分の経験に基づいて発信した情報と、感染症の専門医学者が発信した情報とでは、ユーザにとっての権威性の違いは明白です。
Trustworthiness(信頼性)
「信頼できるコンテンツか」の要件です。
この要件においては、コンテンツだけではなくWebサイト自体の信頼性も評価対象になります。
例えば株式上場企業、官公庁・自治体・公益法人などが運営しているサイトと、個人事業者が運営しているサイトとでは、社会的責任の重さがまったく異なります。
したがって運営者の詳細なプロフィールを明示して社会的責任の所在を明らかにし、https設定で安全に閲覧できる環境を整えているサイトが「信頼性がある」と評価されます。
アパレルECサイトのSEO対策のポイント
アパレルECサイトの集客力を最大化するために必要な、主なSEO対策として次が挙げられます。
(1)サイト構成の最適化
Google検索においては、クローラがWebサイト内のコンテンツを認識しています。このためクローラがコンテンツを認識しやすいサイト構成にすることで、そのコンテンツがGoogle検索エンジンにインデックスされる確率が高まります。
サイト構成の最適化には、クローラのサイト内回遊を容易にするため、次の対策が重要です。
URLの統一
同一カテゴリーのコンテンツなのに、コンテンツのURLが「○○.jp/」、「○○.jp/index.html」などと別々のURLになっているコンテンツのURLは統一する必要があります。URLが分かれていると検索エンジンの評価が分かれるので、検索エンジンにインデックスされる確率が下がります。
パンくずリストの表示
パンくずリストとは、Webサイトにアクセスしたユーザに対し、案内表示板の役割をするインデックス型リストのことです。パンくずリストを表示すると、クローラがコンテンツを認識しやすくなると同時に、ユーザも目当てのコンテンツを探しやすいサイトになります。
(2)画像情報の最適化
アパレルECサイトの場合、キーワード検索に加え画像検索も頻繁に利用されます。したがって画像情報の最適化により、Google画像検索結果の上位に表示させる対策が重要です。そのためには、
・alt属性を使用する……その画像が何を表しているのかを示すalt(代替)属性を指定することで、画像を読み込めない状況下でも画像情報を表示できる
・画像ファイルに簡潔な名称を付ける……「pic01.jpg」の数字だけのファイル名はクローラが認識しにくい。しかし「picメンズジャケット01.jpg」なら認識しやすい
などの措置が必要です。
(3)キーワードの最適化
コンテンツのキーワードは、ユーザがコンテンツを探す際の使用率が高いキーワードで、かつ検索結果で上位に表示されやすいキーワードを設定する必要があります。
一般にはGoogleのキーワード調査ツール「キーワードプランナー」で使用率が高いキーワードを調べ、それを参考にキーワードの最適化を図ります。
(4)ページ表示速度の最適化
SEO対策ではページ表示速度も重要です。ページ表示速度が遅いとユーザのサイト離脱率が高くなるばかりか、Googleの評価も下がります。
ページ表示速度測定ツールで自社サイトの表示速度を測定し、2秒以上だと2秒以下に改善する必要があります。
(5)モバイル端末対応の最適化
現在は、Webサイトのコンテンツ検索はスマホ利用が増加しています。しかし、例えばユーザがダウンジャケットを買うためスマホでアパレルECサイトにアクセスし、商品を検索すると、その画面はパソコンでアクセスした時の画面に最適化されているので、小さなスマホ画面では欲しいダウンジャケットを非常に探しにくく、その時点で購入意欲をなくしサイトを離脱してしまいます。
こうした状況を踏まえ、Googleは2018年3月にモバイル端末からのアクセスを基準にサイトを評価する「MFI(モバイルファーストインデックス)」を発表。サイトに対しモバイル端末対応の最適化を求めています。
このためユーザが使用する端末の画面サイズに合わせ、表示画面を自動的に最適化する「レスポンシブ対応」が重要になっています。
まとめ
アパレルECサイトの目的は、一見客の獲得ではなくリピータとなる「ロイヤルユーザ」の獲得にあります。そしてSEO対策の目的は、「ユーザファースト」の考え方に基づく有益な情報提供と、情報検索の満足度が高い「ユーザ体験」の提供にあります。Googleの評価基準に則った技術的な対策は、それを実現する手段と言えるでしょう。
この認識がアパレルECサイトの集客力を高める「基本のキ」と言えそうです。