CX(カスタマーエクスペリエンス)の重要性やサブスクリプション型ビジネスモデルの普及などを背景に浸透すつつある「カスタマーサクセス」という概念は新たな職種としても広がりを見せています。カスタマーサクセスの概要やカスタマーサポートとの違いについて説明しながら、成功に導くためのポイントなどを紹介します。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとは「顧客の成功」という意味になります。ビジネス用語としてとらえると「顧客を成功に導く」という意味になるでしょう。具体的にはカスタマーサクセスとの比較で理解が深まるのではないでしょうか。
カスタマーサポートの役割考え方
カスタマーサポートとは顧客からのプロダクトやサービスの問い合わせに対し、顧客自身の問題解決を目的とする仕事です。
企業は顧客が抱えている問題を解決するためのサポートをすることは顧客との信頼関係を維持するうえでも重要です。カスタマーサポートは企業が顧客からの申し出に対してであり、あくまでの目的達成は顧客自身にゆだねられているという点にあります。
カスタマーサポートで企業が狙うのは問題解決サポートについての顧客満足度(CustomerSatisfaction)の最大化でしかありません。担当部署もコストセンターであり、顧客満足の延長という位置づけになります。
カスタマーサクセス
製品やサービスの利用者である顧客を本当の成功導くために企業は顧客に対しても積極的に働き掛けないといけないと考えるのが、カスタマーサクセスといわれています。
カスタマーサクセスは顧客へのアプローチは目的達成までストーリ-に沿って行われるので中期的で連続的なことになります。このとき企業が狙うのは継続取引におけるライフタイムバリュ-(LifeTimeValue=LTV)の最大化です。
つまりカスタマーサクセスは顧客の真の目的達成のために能動的に働きかけ長期的な関係を築いて収益を発掘する仕事なのです。対応部署は営業的なアウトバウンドの性格を持ち、顧客の真の目的達成に寄与することになります。
カスタマーサクセスの考えがまれた背景
カスタマーサクセスの考え方はCX(CustomerExperoence)カスタマーエクスペリエンス
という顧客体験を意味する言葉から始まったといわれています。アメリカの経済学者セオドアレビットは「顧客が欲しがっているのはドリルではなく、ドリルによって作られる穴だ」といいました。それにもかかわらず企業はモノやサービスの提供に終始していたのです。
つまり、企業はモノやサービスを売り続け、サポートとしては修理や利用、活用、アドバイス、不具合の解決を売り続けたわけです。製品やをサービス通じてどのような体験を生み出すかは顧客にゆだねていたにすぎないというのです。
カスタマーサクセスの考え方はこのCXの考え方により、顧客の目的達成のための手段(製品・サービス)を提供したり問題解決をサポートするだけでなく、顧客の目的達成(=成功)にまで積極的にかかわろうという考え方なのです。
CX(CstomerExperience)とは
顧客経験を意味するカスタマーエクスペリエンスは顧客の離反防止や継続利用を基本としますので顧客との長い付き合いが維持されます。
顧客とのカスタマーアクセス的なアプローチにより自社製品の課題解決提案にもつながり、さらにアップセルやクロスセルといった需要拡大の可能性も生まれることになります。
カスタマーサクセスの考え方は今日ビジネス戦略において日々重要になっているのです。
カスタマーサクセスを成功させるポイント
サクセスストーリーの明確化
顧客の真の目的達成に働きかけるといっても、到達点はどこなのかは簡単に理解できるものではありません。セオドアレビットの言葉を借りるなら、顧客の求めているものは「ドリルではなくドリルによって空けられる穴」です。ドリルによって快適に穴を空けられるようにすることが顧客の目的なのです。さらに言うならその「穴」は何をするための穴なのか、その穴をどうしたいのかということまで考えよう、というのがカスタマーサクセスなのです。
顧客の真の目的は何であるのかそれを理解するためには、顧客との深い信頼関係が必要ということになります。そのためにも深いコミュニケーションが必要です。顧客の求めるものを徹底して想像する想像力が必要なのです。
例えばフィットネスクラブに入会したお客さんを例にとってみましょう。フィットネスの目的は様々です。「運動不足の解消」という軽いものから「健康のため」、「ダイエット」、「筋肉質の身体を作り上げるため」それぞれの動機は様々だと思います。入会時にそれぞれの動機はスタッフが掴むかもしれません。しかし、それぞれの動機が達せられたら、すぐにフィットネスジムへ通う必要はなくなってしまいます。
顧客にはそれぞれ表面的でないニーズも持ち合わせているものです。例えば「運動不足解消のため」といってフィットネスジムの会員には「運動不足を解消して健康的で長生きしたい」というもう一つの隠れた目的があったりします。一時的な運動不足を解消してもさらに体力をつけて快適な毎日を過ごすためにできるだけ長くジムに通わせるようなストーリーを会員とジムの間で共有できれば、その人はそのジムと一生の付き合いができるようになるはずです。
企業側が顧客に対して向き合うのは現在のニーズだけでなくその背景にあるニーズやウォンツ、さらに抱えている問題などを見つけ出し、的確なアドバイスを提示できるようにすることなのです。
顧客データの管理
顧客を成功に導くという意味では、顧客のデータをしっかり管理し顧客を深く理解できれば成功する確率も高くなるでしょう。昨今企業から顧客へのアプローチという点では徹底した顧客情報の管理が進んでいます。特にカスタマーサクセスの観点からの顧客情報管理は急激に注目を浴びています。
顧客の利用履歴などの情報に関しては重要視されています。離反予兆やアップセル・クロスセルなどの傾向を掌握し、顧客を導くだけでなく顧客の成功モデルを構築してそこに至るストーリーを作り上げることも行われています。顧客データの蓄積はそのような観点からも進んでいるのです。
具体的戦略の構築
カスタマーサクセスは顧客の真の目的達成という抽象的かつ、あいまいでありながらポジティブだがとても相対的な目標になります。そのため努力目標やスローガンになってしまうこともあり得ます。
その意味でも具体的で戦略的な方法論が求められるのではないでしょうか。顧客の真の目標達成という、個別的な答えを求めることから、正解のない取り組みともいえます。客観的で論理的な目標にはならず、価値観に基づかねばならないこともるかもしれません。それだけにできるだけカスタマーサクセスのマインドやスタンスを明確にデータやツールを駆使して客観化できる成果を目指すべきだと思われます。
顧客同士のコミュニティ
顧客として利用が始まって以降も製品やサービスの性能や機能を十分に発揮できないでいる顧客もあるでしょう。そのような場合にカスタマーサクセスの観点から顧客にコンタクトして情報提供したり、より良い製品やサービスを促すためにユーザーコミュニティや勉強会の運営など、顧客への積極的なアプローチでサービスを提供して、製品・サービスの活用を成功に導くやり方も存在します。
顧客同士のコミュニティの中で顧客単価の向上を目指し、成功体験を共有するのもカスタマーサクセスの一環といえるでしょう。それぞれの製品・サービスのり方によって様々ですが、顧客との信頼関係の構築はカスタマーサクセスには欠かせないものです。
離反予測とアップセル、クロスセル
カスタマーサクセスによって顧客成功を構築する効果として付随するものとして、顧客の離反予測があるでしょう。顧客情報を整理しながら、情報発信をすることでそれぞれの顧客が離れていくことを防ぎ、どのようなことをすると離れていくだろうかという予測も可能になります。少しでも長く顧客として関係を続けることは顧客からの離反を予想することもできるでしょう。
さらに商品やサービスについての情報を深くすることで、類似関連商品への関心からクロスセルにつながったり、さらに高級な製品・サービスへの興味を引き出しアップセルにつなげることもできます。このような顧客心理を掴むこともカスタマーサクセスの効果といえるでしょう。
まとめ
カスタマーサクセスとは顧客の成功を導くためのサポートする概念や仕組み職種のことです。製品やサービスの利用を続けてもらうことで利益が拡大するという考えがサブスクリプションモデルの事業成功モデルです。顧客の幸福と成長こそが自社の利益と成長に直結する。それがカスタマーサクセスの根本思想があるといっていいのです。