現在は様々なWeb広告が利用されています。その中で注目されているのが「行動ターゲティング広告」と言えます。なぜ注目されているのでしょうか。ここではその解として行動ターゲティング広告の仕組みとメリットを解説します。
行動ターゲティング広告とは
行動ターゲティング広告とは、広告主となる企業のWebサイトにアクセスした見込み客に対し、その客が興味・関心を持つ広告を配信するWeb広告です。「インタレストマッチ広告」とも呼ばれます。
行動ターゲティング広告は自社のWebサイトにアクセスしたユーザに対して広告配信を行うので、通常のノンターゲティングの広告よりもコンバージョン率が高くなるのが特徴と言われています。
なぜなら顧客分析を行うデシル分析、RFM分析などに基づき、顕在見込み客と判定したユーザに対し自社Webサイト上の行動履歴を分析し、それぞれのユーザが関心を持っている情報を盛り込んだ広告配信ができるからです。
このためマーケティング活動としても、マーケティングROI(マーケティング投資額に対し得た利益率)の高い広告手法と言えます。
なお行動ターゲティング広告は「ターゲティング広告」の一手法です。主なターゲティング広告として行動ターゲティング広告の他に次の広告手法があります。
- リターゲティング広告……自社Webサイトにアクセスした見込み客を追跡し、その見込み客がアクセス中の他のWebサイトやSNSに広告を配信
- オーディエンスターゲティング広告……オーディエンス(人)に的を絞った手法。ブラウザーの識別情報、アプリの広告識別子の閲覧情報などを利用し、特定の見込み客へ広告を配信
- デバイスターゲティング広告……デバイスに的を絞った手法。パソコン、スマートフォン、タブレットなど見込み客がWebコンテンツ閲覧に利用しているデバイスに適した広告を配信
- 位置情報ターゲティング広告……見込み客の位置情報に的を絞った手法。モバイルデバイスのGPS情報などを基に、特定のエリアにいる見込み客に広告を配信。オンラインから実店舗へ誘導する手法として効果的
- コンテンツターゲティング広告……コンテンツに的を絞った手法。見込み客が閲覧している特定のWebコンテンツに広告を配信する。人為的またはシステムによるセグメンテーションにより広告配信先を決める。
- デモグラフィックターゲティング広告……年齢、性別、職業、所得など見込み客の属性情報に的を絞った手法
- 検索キーワードターゲティング広告……見込み客が検索に使用したキーワードに的を絞った手法
行動ターゲティング広告の仕組み
行動ターゲティング広告は、クッキーをベースにした次の仕組みで広告配信が行われます。
- サイトにアクセスしたユーザを個別に識別
- 識別したユーザのサイト内行動履歴を収集・保存
- ユーザの過去の行動履歴から配信する広告を決定
具体的には次の処理を経て見込み客に広告が配信されます。
例えばある不動産会社が運営している不動産情報提供サイトを例にすると、ユーザがそのサイトAにアクセスし、不動産情報を閲覧すると、
- WebプラウザがWebサーバへユーザの閲覧リクエストを送信
- Webサーバが閲覧データを取得するタグを含んだコンテンツをWebブラウザーへ送信
- Webブラウザーがユーザの閲覧済みコンテンツ情報をアドサーバへ送信
- アドサーバが行動履歴を保存した後、クッキーにユニークユーザID、その他の情報を設定してWebプラウザへ送信
の処理が行われます。
次に同じユーザが、行動ターゲティング広告掲載枠のある別のサイトBにアクセスすると、そのサイト内で次の処理が行われます。
- WebブラウザーがWebサーバへユーザの閲覧リクエストを送信
- Webサーバが広告表示タグを含んだコンテンツをWebブラウザーへ送信
- Webブラウザーが広告表示リクエストとクッキーをアドサーバへ送信
- アドサーバがそのユーザの行動履歴、クッキー、セグメント定義などに基づき配信する広告を決定
- アドサーバがサイトBへ広告を配信
なお行動ターゲティング広告においては、サイトにアクセスしたユーザの行動履歴として
- コンテンツのカテゴリ
- 閲覧したコンテンツ情報
- 検索に使ったキーワード
- アクセス日時
- IPアドレスを元にした地域情報(都道府県単位)
- 位置情報(モバイルデバイスからアクセスした場合)
- 広告クリック
などのデータが保存されます。
行動ターゲティング広告のメリット
行動ターゲティング広告のメリットとして、次が挙げられます。
(1)コンバージョンの可能性が高いユーザ層への広告配信が可能
自社が設定したターゲットユーザ層へピンポインでの広告配信が可能です。
例えばリスティング広告では、自社のコンテンツを検索したユーザに広告配信をできますが、そのユーザが自社商品の購買意欲を持っているかまでは分かりません。単なる好奇心で自社コンテンツを検索しているケースが多々あるからです。
しかし行動ターゲティング広告の場合は、見込み客との接点獲得が目的ではなく自社商品に強い関心がある見込み客への広告配信が目的なので、コンバージョン獲得の可能性が極めて高くなります。
(2)広告配信先のコンテンツに制約されない
広告配信先のWebサイトのコンテンツに制約されないのも、行動ターゲティング広告ならではメリット言えます。
例えばコンテンツターゲティング広告の場合、女性ファッション系の商品広告は女性ファション系情報サイトにしか配信されません。そうすると配信先が決まってしまうので広告範囲が限定されます。
しかし行動ターゲティング広告の場合は、配信先の制約がないので、自社商品とは無関係のWebサイトにも広告配信ができるので、見込み客へのリーチが高くなります。
(3)費用対効果の高い広告配信が可能
自社商品に対して強い関心がある見込み客に広告配信をするので、コンバージョン率の上昇とCPA(見込み客の1コンバージョン単位の広告経費)の低下を見込めます。ひいては広告関連の無駄な経費削減に繋がります。
国内で利用できる主な行動ターゲティング広告
(1)Google
Googleが準備しているターゲットリストで、見込み客の過去の検索履歴やWebサイトの閲覧履歴を基に、ターゲットを選んで広告を配信します。
マスメディア広告を始めとするオフライン広告を主に展開している企業が、Web上での認知度向上を目指した広告配信に適していると言われています。
(2)Yahoo!
Yahoo!が準備しているカテゴリ一覧の中から、自社商品と関連するカテゴリを選んで広告を配信します。
過去に指定したキーワードで検索した見込み客に的を絞った広告配信なので、比較的安いCPAでコンバージョン獲得が可能と言われています。
(3)Facebook
コアオーディエンス、カスタムオーディエンスのいずれかの方法で広告を配信します。
コアオーディエンス……Facebook利用者の年齢、性別、学歴、ステータス、デバイス、利用状況などの見込み客のユーザ特性に基づき、趣味・関心、商品購買履歴などに応じて広告を配信
カスタムオーディエンス……自社広告やFacebookで自社と何らかの関わりがある見込み客に的を絞って広告を配信
(4)ECサイトのレコメンド
ECサイトではユーザが検索したり購買した商品に対し、追加購入やついで買いを促すため他のユーザがどんな関連商品を購買したかの「レコメンド」が表示されます。このレコメンドも行動ターゲティング広告と見られています。
まとめ
行動ターゲティング広告は、コンバージョン獲得の確率が高い見込み客に的を絞って広告配信ができる効率的な広告手法です。見込み客個別のWebサイト閲覧履歴、商品購買履歴などのアクセス情報が蓄積されてゆくに連れ、行動ターゲティング広告の精度が上がります。このため見込み客のWebサイト閲覧履歴、商品購買履歴などのデータを積み重ね、蓄積量を増やすことが行動ターゲティング広告においては何よりも重要になります。
また行動ターゲティング広告の精度が高まると言うことは、見込み客個別の特性に基づいて販促活動を展開するワントゥーワンマーケティングと同じ効果があるので、結果的に
「この広告を見て納得した」など、広告を見た見込み客の満足度が高い広告活動展開にも繋がるでしょう。