マーケティングにおける4Pとは今では古典的なマーケティング理論になっていますが、公表された当初は非常に画期的な分析方法でした。
第二次大戦後勝利したアメリカは1950年代黄金期を迎えます。当時のアメリカは世界の工場として大量生産大量消費を謳歌し世界中から優秀な人材や資本を集めていました。まさにアメリカは夢の国だったのです。当時の経営の課題は、ヒトや資源などの経営資源をいかに効率化するか等企業内部の問題すなわち経営管理(Management Control)が中心でした。しかし、次第に市場が飽和してくると更なる成長のための新規事業や新市場の開拓、長期の計画の重要性を増してきました。経営の課題が企業内部のマネジメントから企業外部での戦い方や長期的な将来戦略を考える必要性が出てきたのです。
こうした中、1960年代ビジネス戦略が検討され始めた時期に、当時のハーバードビジネススクールの教授だったエドモンド ジェローム・マッカーシーによって打ち立てられたビジネス分析法が4P分析だったのです。
当時から現在に至るビジネス戦略分析のうえで大変意味のある分析法です。今日まで多くの修正を加えられながら、脈々と引き継がれているビジネス戦略分析法の一つです。
4Pとは4つの頭文字
4P分析は、自社の視点でマーケティング戦略を分析するという点で特徴があります。
製品をその頭文字4つの「P」に区分けしてマーケティングを仕掛けるかを提唱したものです。それぞれの要素に基づいて4つの要素を取り上げました。
製品(Product)
製品についての戦略は4Pの中で最も重視すべき要素といわれています。製品とは品物に限らず、商品やサービスなども含まれます。広い意味での会社が生み出すものと考えられます。
まずターゲットとする顧客に対して製品コンセプトを決定します。製品コンセプトとは単純に製品を作るというだけではなく、どんな製品なのかその意味付けをはっきりさせたものです。
製品の具体的イメージ
製品の開発に向けて具体的なコンセプトを作ってみましょう。まず大きなコンセプトとして「仕事の合間に食べられる手軽なお菓子」を作ってみましょう。この商品が顧客にもたらすメリットを整理してみませんか?
- 仕事の合間に食べられるのですから、手を汚さずに食べられたほうがいいです。
- 食べかすが出ない方が仕事の邪魔になりません。
- 食べるときに周囲に気づかれないように静かに食べられる方がいいです。
- お菓子を取り出すときも静かな方がいいです。
- 水分がほしくなっては食べる手間が増えてしまいます。
- あまりくせにならずに幸福感がすぐにやってくる方がいいです。
- デザインが派手過ぎない方が見られても恥ずかしくないです。
新しい製品のコンセプトのイメージが膨らんできたでしょうか?他にもたくさんあると思います。このように製品についてのイメージをしっかり作り上げることが新製品には欠かせないということです。
価格(Price)
価格設定はマーケティングに置いてとても重要です。顧客が「この製品はぜひ欲しい」と思わせる価格を設定することは実はとても難しいことです。
一杯1000円のコーヒーでもしっかりした味わいがあってその他に付加価値があれば飲みたくなります。どんなにおいしい100円のコーヒーでも何の付加価値がないなら、欲しくないときは欲しくありません。
また、価格を高く設定すれば利益は大きくなりますが、売れにくくなることもあります。価格をおさせると利益が出にくくなります。
そこで価格はコストと、価格相場、ブランディング、マーケティングという4つの視点が大切といわれています。
コストとは商品の製造過程で発生する費用のことです。価格相場とは企業目線でなく顧客が考える相場ですが、ブランディングとは例え価格が高くともそれに見合った価値があると顧客に期待させることができます。価格設定にも深い配慮が必要です。
販売促進(Promotion)
プロモーションとは顧客や流通業者に対して製品の存在を認知させるための戦略や手法を言います。製品やサービスの機能が効果的に伝われば、意図的にニーズを作り出すことも可能になります。
プロモーションの手法は多様です。TVを始め広告などのマスメディアを使ったもの、チラシやダイレクトメールなどの送付物、リベントや講習会など催し、Web情報などを使ったコンテンツマーケティングなど様々です。
それどれの製品にあったマーケィングを展開して顧客を獲得していく戦略を立てる必要があります。それぞれの顧客の思考や行動を分析することを忘れてはいけません。
販売ルート(Place)
顧客に届けるための経路のことです。基本的に流通経路や手段を増やせば顧客が商品を手にする機会は増えますが、それだけコストも高まります。そのため流通ルートの増加により利益の上昇とコスト増のバランスを考慮して設定をしなければいけません。どこで何をどう売るかという判断は価格設定とは別の重要な要素です。
また、今日流通状況の多様化が進み複雑化しています。顧客が製品に出会う機会が以前に比べて急激に増化しているのです。そのため販売ルートの設定にも今日多くの分析が進んでいます。
販売ルートの多様性
流通戦略には以下の5つの方法があります。チャンネルとは流通経路のことです。
①開放的チャンネル戦略
あえて流通経路を限定せず広い範囲で商品を流通させる方法のことです。流通ルートが広いのでコストがかかる可能性が高いですが、様々な形で顧客に出会うことができるので顧客に接する機会が増えます。
②選択的チャンネル戦略
契約内容や販売力による条件を考慮し、あえて選択的に販売ルートを特定するやり方です。顧客が商品に接する機会が限定されますので、製品のブランド感を持つことができます。
③排他的チャンネル戦略
限定された地域や店舗に限定販売権を与え、販売管理やチャンネルのコントロールのしやすい環境を作って流通させるやり方です。顧客が製品に出会う機会を限定的にすることで製品への枯渇感を生むことになります。製品に出会ったときの特別感を演出することができます。
④チャンネルミックス戦略
状況に応じて複数のチャンネルを柔軟に使い分けて展開するやり方です。特に流通経路にこだわることなく製品を流通させ、最も都合のいいチャンネルに出会ったときに選択的に重点を置いて流通させるやり方です。
⑤チャンネル開拓戦略
既存のチャンネルに頼ることなく企業が自ら手間とコストをかけて新たなチャンネルを開拓する方法です。独自のルートの開発になるので時間がかかることも多いですが、うまくいくとそのルートの寡占状態が実現できます。
4C分析との関係
4P分析は長くマーケティング戦略の中で重要な位置を占めていました。しかし、どうしても企業中心の戦略設定になっているので顧客の視点が忘れられがちでした。特に近年はマーケットを戦略的に分析する場合、顧客の視点を取り入れないとマーケティング戦略が十分に打ち立てられなくなりました。この問題に修正を加えたのがロバート・ラウターボーンです。
1990年ロバート・ラウターボーンは従来の4P分析に新たに顧客(Customer) 目線からの戦略手法を4C分析を加えました。この4Pに4Cを加えた分析はマーケィングミクスの手法を構築するうえで大きに成果を打ち出しています。
まとめ
製品のマーケティング戦略において、4P分析を行うことは企業目線で戦略を構築するうえで大変効果のあるやり方です。しかし、現代のマーケティングでは企業目線ではどうしても限界があります。4P分析に4C分析を加えることでより現代的なマーケティングが可能といえるでしょう。
4P4C分析上で重要なことは相対する4P・4Cの間で互いに整合性が取れているかということです。バランスよく、矛盾する要素がないか慎重に検討することでより効率的な戦略が打ち出すことができるでしょう。
4P・4C相互の要素を加味しながら戦略を立てることでマーケティングの全体像が浮かび上がるのです。それが現代的なマーケティング戦略といわれています。