自社サイトの稼働率を評価する基本となる「直帰率」は、経費をかけて運用しているサイトのコストパフォーマンスを高める重要な対策の1つです。ところがその目安となる指標とチェック法、改善法などが分からず、秘かに悩んでいるサイト管理者が少なくないと言われます。ここではそうしたお悩みにお答えします。
そもそも直帰率とは
直帰率とは、ウエブサイトへアクセスしたユーザがランディングページの閲覧以外、何のアクションも起こさず当該サイトを離脱した割合を指します。
この場合、アクセスを「セッション(訪問)」と呼び、セッションは、アクセスしたユーザが当該サイト内を回遊し離脱するまでの行動を指します。そしてランディングページから別のコンテンツへの移動、資料ダウンロード、動画再生などの回遊行動は「アクション」と呼ばれます。
また直帰率とよく混同されるのが離脱率です。離脱率とは、同一サイト内のコンテンツ総閲覧回数のうち、離脱されたコンテンツ回数の割合を指します。
直帰率はセッション単位で算出されるのに対し、離脱率はコンテンツ単位で算出される違いがあります。
サイト管理において直帰率改善が重要な理由
直帰率はウエブマーケティングの観点から捉えた場合、次の理由により自社サイトで公開している現行コンテンツがマーケティングに有効か否かの目安になると言われています。
直帰率が高い=サイト内回遊度が低い
適切なSEO対策をすれば、自社サイトへアクセスするユーザ数が増えます。しかしアクセスしたユーザがサイト内を回遊し、色々なコンテンツを閲覧してくれないと商品の問合せ・購買、会員登録、メルマガ配信申込みなどのアクションに繋がらず、見込み客獲得効果が得られません。
自社サイトの直帰率が高い場合は、ユーザの回遊を促すコンテンツの公開が早急に必要です。
直帰率の平均と自社サイトの直帰率チェック法
米国の「BRAFTON 2017 CONTENT MARKETING BENCHMARK REPORT」によれば、サイトの種類別直帰率の平均は次のようになっています。
- ECサイト………………20~45%
- コーポレートサイト……60~90%
- ポータルサイト…………65~90%
ユーザが知りたい情報を得る確率が高いECサイトの直帰率は比較的低くなっていますが、アクセスしてみなければ知りたい情報が得られるのか分かりにくいコーポレートサイトやポータルサイトの場合は、直帰率が高くなっています。
また一般に、
- 内部リンクが少ないサイトや発リンクが多いサイトは、ユーザが回遊するコンテンツが少ないので直帰率が高い
- Q&Aコンテンツはユーザが問題を解決できれば、他のコンテンツを見る必要がないので直帰率が高い
- ランディングページはユーザが閲覧したかったコンテンツと異なるとすぐ離脱するので直帰率が高い
などの傾向があると言われています。ただ直帰率の中身はコンテンツ滞在時間や離脱率の差などにより、評価が変わります。
例えば直帰率が高いサイトでも、コンテンツの滞在時間が2分以上なら、ユーザはそのコンテンツを熱心に読んだと推測できます。一方、滞在時間が30秒未満ならそのコンテンツはユーザにとって魅力がなく、スルーされたと推測できます。
また直帰率が高くても離脱率が低いコンテンツの場合は、同一サイト内のコンテンツを複数閲覧していることになるので、ユーザ満足度が高かったと推測できます。
したがって直帰率は、「率」と言う数値のみでサイトの良し悪しを判断できないと言うところでしょう。
では直帰率の改善が必要なサイトは、どのようにして判断すれば良いのでしょうか。それは一般に、次の2つが判断基準になると言われています。
(1)コンバージョン数
ウエブサイトを開設する目的の1つにコンバージョン獲得があります。
例えば直帰率が40%と低くてもコンバージョン数が計画より少ない場合は、直帰率をさらに低下させる改善が必要と判断できます。直帰率の低下により回遊性が上がり、コンバージョン数増加の可能性があるからです。
(2)アクセス数は多いが滞在時間が短いコンテンツ
直帰率が高いサイトには、ユーザの滞在時間が長いページと短いページが混在しています。滞在時間が短いコンテンツはユーザの検索目的に合っていない、滞在時間が長いコンテンツはユーザの検索目的を満たしていると推測できます。
この仮説からサイト全体の平均直帰率に対し、アクセス数は多いが直帰率が高いコンテンツは改善の必要があると判断できます。
ユーザが直帰率する主な要因と改善法
ウエブサイトにアクセスしたユーザが、ランディングページから直帰する要因は様々ですが、主な要因として次が挙げられます。
<1>閲覧したいコンテンツがない
<2>デザインが派手でコンテンツが読みにくい
<3>コンテンツの表示速度が遅い
<4>ランディングページで検索目的が果たせた
ユーザが直帰する要因の<1>から<3>までは、ユーザにストレスを与える要因なので早急な改善が必要と考えられます。しかし<5>の要因はランディングページで検索目的が果たせた結果の直帰なので、改善の必要性は低いと考えられます。
<4>のようにユーザが検索目的を果たせたコンテンツは、必然的に直帰率が高くなります。したがってサイト管理者は「直帰率が高い=改善すべきコンテンツ」とは必ずしも限らないケースもあることに留意する必要があるでしょう。
直帰率が高いサイトの大半も、「ユーザストレス」が多いサイトと言われています。したがってストレスの少ない快適なサイトを再構築するのが、直帰率を低下させる第一歩と言えるでしょう。その方法として、一般に次が挙げられます。
(1)SEOキーワードの見直し
ユーザが求める情報を検索した際、検索でヒットしたコンテンツの情報と検索キーワードに齟齬があれば、ユーザは直帰する可能性が高くなります。自社サイトで検索されたキーワードを調べ、コンテンツの情報とキーワードに齟齬がないか調べる必要があります。
(2)コンテンツの見直し
ユーザストレスの1位が「閲覧したいコンテンツがない」だと言われます。
- ユーザニーズに沿ったコンテンツを提供できているか
- 競合サイトより有益で高品質なコンテンツを提供できているか
- コンテンツの文字数は多過ぎず少な過ぎないか
- コンテンツの要点を容易に掴める文章になっているか
などを再チェックしましょう。
(3)表示時間の短縮
あるウエブツール開発ベンダの性能テストによると、アクセスから2秒以内に表示されるコンテンツの直帰率は9%、表示に5秒要するコンテンツの直帰率は38%でした。つまりわずか3秒の差で直帰率が4.2倍も上昇との結果でした。このテスト結果からも、表示時間とユーザストレスは強い関係にあることが窺えます。
ユーザにストレスを与える表示速度の遅さは、コンテンツの情報の良し悪しを抜きにして、ユーザに不要な情報と判断される可能性が高く、ひいてはサイトの信頼性低下要因になる可能性もあります。自社サイトで公開しているコンテンツの表示速度をチェックし、表示速度の遅いコンテンツは、早急に速度を改善する必要があるでしょう。
(4)コンバージョン導線の設定
大半の企業サイトには「問合せ」、「資料請求」など、見込み客獲得のためのコンバージョンバーを設置したコンテンツがあります。
企業としてはすべてのコンテンツにコンバージョンバーを設置したいところですが、それだとユーザに違和感や嫌悪感を与える可能性もあり、現実的とは言えないでしょう。
そこでもし、自社サイトのコンバージョン獲得数が計画より少ないなら、他のコンテンツからコンバージョンバーを設置したコンテンツへスムーズに移動できる導線を設定する必要があります。
ユーザニーズに沿った有益なコンテンツを提供しているサイトが、この導線がないため、例えばランディングページのコンテンツを読んだユーザがそれに関する資料請求をしようとすると、そのバーが見つからないためサイト内を回遊せずそのまま離脱、直帰率を高めているケースも見られます。
まとめ
直帰率はそれ自体を分析しても大した意味はありません。しかしアクセス数、離脱率、コンバージョン数、滞在時間などの関連数値との関係性で分析すると、「直帰率の中身」が見え、改善すべきコンテンツを発見する道標になります。
ウエブ管理者は改善すべきコンテンツを発見したら、コンテンツ編集者やウエブデザイナーなどと協力し、直帰率低下に繋がるコンテンツ作りに努めれば、自社サイトの価値を一段と高められるでしょう。